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RUN FOR YOUR LIFE !!

RUN FOR YOUR LIFE !!

3月19日

3月19日 マウナケア

雨の降るBanyan Drを歩き、
ゴールへ向かう仲間に声をかけながら、
ホテルへと戻る。
みんな疲れているにも拘わらず、
笑顔を返してくれる。
ホノルルマラソンとは比べようも無いほど小さな大会だが、
それに勝るとも劣らない貴重な経験だった。

...雨のせいもあるんだけど。

ホテルへ戻りシャワーで汗を流しひと休みする。
さすがに疲れているのか、
しばらく寝入ってしまった。

目を覚ますと、ひどく腹が空いていた。
すこし疲れを感じるが、
食事をしにいくことにする。
日本を出発する時に着ていた、
冬用のジャケットを車に積み込み出発。

ショッピングセンターのフードコートで軽く食事。
スナック類、水を買い込み、更なる目的地へ。

その目的地があるであろう方向に目をやる。
厚い雲が覆っている。

...無理かも。

不安が過るが、
雨の中、ヒロの町をブラつく気にもなれない。

レンタカーを借りる時に、
「サドルロードへは行っちゃダメ!」
と言われたが、
目的地はそのサドルロードの向こうにある。

マウナケア

ハワイ島で一番高い山。
天体観測の聖地とも言える場所で、
アメリカのみならず世界各国の天体観測基地が設置されている。
標高4,200m。
そこで星を見る。

...幼い頃、アニメの影響か、
星の世界に憧れたことがあり、
どうしてもマウナケアで星を見てみたかった。

様々なガイドブックをやウェブで検索してみたが、
ツアーでマウナケアへ行くとすると最低でも$100はかかる。
...自力で行くことを決断させるのに充分な理由だ。

ヒロの町を出て、地図に従いサドルロードに入る。
マウナケアへ繋がっていると思うと、
それだけで気持ちが高揚してくる。
雨は降り続いていたが、もう構いはしない。

雨のドライブ

サドルロードは、その名の通り、
アップダウンを繰り返しながら高度を上げていく。
まるでジェットコースターを運転(?)しているような気分になってくる。
かなり慎重に運転していたせいもあるが、
地元のドライバーはどんどんスピードを出し、
僕らを追い抜いていく。
経験的に、こういう場所では慎重に、
かつ地元の人たちに敬意を払って運転するのが良いと思っている。
後方から来る車には、なるべく道を譲るようにした。

サドルロードの前半は、
大きな木やシダが茂り風景をにぎやかにしていたが、
高度が上がるにつれて徐々に少なくなり、
徐々に溶岩の黒い大地が辺りを埋め尽くすようになってくる。
その溶岩にところどころ車の部品が散乱していた。

1時間ほどのドライブで、
マウナケア山頂へ向かう分岐点に到着。
サドルロードを右折し、サミットロードへ入る。
ついにマウナケアへ。
意外にもマウナケアのふもとには牧場が広がり、
牛に注意の看板が立っていた。

雨は止んだが、
相も変わらず厚い雲がマウナケアの頂を隠している。
やっぱりダメか。
という思いと、もしかしたら、が交錯し、
なんともいえない気分で車を走らせる。

オニヅカ飛行士

オニヅカ・ビジター・インフォメーション・ステーションに到着。
標高2760m。
風が強く、思いのほか寒い。
サミットロードは、ここで公園管理局のレンジャーによって閉鎖されていた。
どちらにせよ山頂に行くためにはここで時間をつぶし、
高度順応する必要がある。
深呼吸をしてみるが、特に酸素が薄いような感じはしない。

大雪だそうです

観光ツアーの車を横目に見ながら、
おそらくツアーガイドであろう人たちに軽く会釈。
サミットロードで車を誘導しているレンジャーに、
山頂まで行けるか聞いてみる。
「大雪だよ」
...確かに先日見たマウナケア山頂は雪化粧をしていたが、
大雪が降っているとは思いもよらなかった。

風と寒さから逃れるようにステーション内に入る。
1986年のスペースシャトル事故で亡くなられた、
オニヅカ宇宙飛行士の展示物に目をやりながら、
当時の衝撃的な映像を思い出していた。

ステーション内は資料展示しているブースと売店ブース、
それと天文台の映像を紹介するブースにおおよそ別れている。
売店ブースで記念にとステッカーを2枚ほど買い求め、
映像ブースにある椅子に座ってひと休みしていると、
ふいにツアー客への説明がまさにすぐそばで始まった。

「状況的に、ここで星空が見えるかどうか分かりません。
ここでは、日没まで少し時間があるのでオニヅカ・ステーションと、
マウナケアに関するお話をします。
ただ、島の西側はすでに雲も薄くなってきています。
1時間ほどして天候の状況を判断し、
山を下りて海岸まで行き星空観測というオプションも設けます。」

あー、やっぱりダメか、と思っていると、
ツアーガイドさん(日本人)が説明しながら声をかけてきた。
「ここがオニヅカ・ビジター・インフォメーション・ステーションと
名付けられた理由ってご存じです?」
「...チャレンジャーの事故で亡くなられた、
オニヅカ宇宙飛行士を記念してですよね。」
「そのとおり、で、この写真の方がオニヅカさんなんですが、
幼い頃から宇宙飛行士になりたい、と思って夢を実現された方なんですね。
で、ご主人、小さい頃の夢って何でした?」
「芸術家になること、でした。」
「夢は叶ってますか?」
「うーん、道半ばってとこですね。
メインはサラリーマンですけど油絵も続けてますよ。」
「それは、素晴らしい。いつかちゃんと夢が叶うと良いですね。」
「ありがとうございます。」

...一方的にツアー参加者だと思い込まれてしまったのには訳があり、
説明していたのは、どうやら現地合流したガイドさんだったようだ。
これ以上勘違いさせても申し訳ないと思い、
「あのー、僕らツアー参加者じゃないですよ。」
「えっ。ここまで自力で来られたんですか。」
「...レンタカーで。」
「あ、あの車。まあ、ここでお会いしたのも何かの縁でしょう。
もし良かったら、僕らのツアーと一緒に行動しましょう。」
他の参加者の手前、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、
答えは、「ぜひ♪」。

マウナケアに関する伝説や、遺跡、歴史、天文台の話、
オニヅカ宇宙飛行士の話、とても聞いていて面白かった。

終盤、レンジャーがやってきてガイドさんに情報を伝える。

「西の空が晴れて来ました。夕陽が見えると思います。
ここから10分ほどの丘まで登って見てみましょう。」

ツアー参加者に防寒着が配られる。
親切にも僕らの分も余計に車から出してくれた。
防寒着を着込み、近くの丘へ向かう。
ステーションから少しふもとの方へ戻り、
赤く湿った土の上を歩く。

大げさな二人

丘の名前はプウ・ケオネヘヘエ。
急な坂道を登っていると思いのほか息が切れる。
(マラソンの影響かもしれない...)。
ここが高地であることを改めて思い知らされた。

丘の頂上への途中、西の方向にあった雲が切れはじめ、
雲の隙間から太陽が顔を覗かせる。
溢れるような光が全身を包む。
マウナケアの山肌と雲を見事なまでに朱の色に染めていく。
時間とともにその色は紫からやがて濃い青に変わっていくのだが、
変わるにつれて、その折々に深く心に去来する何かを感じる。
夕陽を見て、ここまで感動するものだとは思っていなかった。

夕陽2

かなり暗くなるまで丘の上で地球の営みを体感し、
他の参加者とともにステーションへ戻ることにする。

雲海2

空を眺めると、急速に雲が流れていく。
辺りは濃い群青に包まれはじめる。
と、その時、ひとつの星が見えた。
「カノープスという星です。」
ガイドさんが説明してくれた。

*デジカメの能力の都合により、星空の写真はありません。

実際、星が見える状況になるなんて思えない天気だったから、
星が一つ見えただけで感動してしまった。

風が雲を払っていく。
闇が徐々にその深みを増していくとともに、
少しずつ星の数が増えていく。
ガイドさんが星や星座の説明を始める。
聞いてるうちに南の空は星で埋め尽くされてしまった。
(言い過ぎではなく、ほんとにそういう感じ)

冬の銀河がその流れを見せている。
気が付くと、
西も、北も、東の空も天頂も雲が取れていて、
星で辺りが満ちている。

西の空には「すばる」。

星に囲まれている感覚。
思わず溜め息をつく。
涙が出そうなくらい美しい。
こんな夜空は見たことが無い。

周囲には明かりなんか無くて、
真っ暗な世界なんだけど、
星の明かりが降り注ぎ、
なんだか影まで作ってくれそうなぐらい、
ものすごい星の数。

星の空に感動しながら、
飛び入りガイドツアーは終了。
ガイドさんと参加者の皆さんに丁重に謝意を伝え、
自分達のレンタカーに乗り込む。
車の中で、
「帰りたくねー、一晩でも見ていたいー。」
と言いながら、ヒロの町へ。


...元素が増えるためには、
超新星爆発を繰り返すことが必要だと聞いたことがある。
マウナケアの星空を見ながら、
自分も星のかけらなんだと改めて実感した。

星たちが、
ものすごい力を分けてくれたような気がした夜。
こんな星空、一生忘れない。
きっと。


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