★シナリオ千夜【060】椿三十郎|菊島隆三|小国英雄|黒澤明
黒澤作品では一番おもしろい作品。いっぽう何か調子よすぎるところもあるから、批判的な人もあったかも知れない。シナリオも登場人物がてんてんとして、少々よみづらい。わかりにくいところもある。主人公・三十郎が何んでもあり―で、第一サムライらしくない。身元不明だ。やたら人を斬る。それに簡単な|裏切り|行為だ。この三十郎の原型は映画「七人の侍」のあれ―かも知れない。私の頭のなかには―それらしい典型的な人物像があって、伊藤雄之助の|家老|その奥方の―入江たか子のおっとりした性格など、黒澤は私のイメージをみんなハズしている。劇中の仲代達矢も加山雄三ら若手たちも驚いている。ここのところの―アホらしさが、この映画のねらいだったかもしれない。シナリオには|小国英雄|という娯楽派の大家がいる。それを|菊島隆三|が骨太に組み立てていく、それはまるで―|とても書けない|三船仲代の対決シーンで爆発させていったようだ。なんだかんだ云っても実は私は―この作品が好きです。シナリオ掲載誌●全集|黒澤明・第五巻|岩波書店――――――――――――――――――――――――――――