000000 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

HP de るってんしゃん

第二章 海原の箱

          第2章 海原の箱

 しかし、首領の周りには誰も寄って来なかった。もうすぐ夕飯時だからだろうか。それとも実は嫌われ者なのか?

「しかたない。一人であの箱を取りに行こう!」

ざぶるうん。ざぶるうん。首領は海へと入っていった。
どんぶらこ。どんぶらこ。桃のマークのついた出荷用の小さな木箱はゆっくりと流れている。・・・沖の方へ。

「う~ん、なかなか箱に近づかないな~?しっかし、春の海はまだ冷たいや。さむっ。・・・しまった!俺、海賊なんだから船で来ればよかったんだ!ついつい飛び込んじゃって・・・。必死に泳いでる俺って一体・・・?」

 しかしさすがの筋肉隆々。次第に箱へと近づいていった。

「あ~、やっと箱に追いついたぞ!」

その時、前方から叫び声が聞こえてきた。
「キャー!」「島の海賊がやってきたぞ!」「早く逃げろー!」
箱を追いかけているうちに、いつのまにか岸の近くまで来てしまったようだ。

「あ、いや、違うのに・・・」

首領は小さな木箱と共にぽつんと海に浮かんでいた。少し寂しさを感じた。そして、いそいそと島へ泳いで帰った。

 「あれ?桃のマーク?これ、桃だったのか!?」
島の端で首領は箱を開けようとしていた。
「ちょっとあんた!夕飯の支度はどうしたのよ」
背後でおときの声がして首領はビクッと振り向いた。
「こんなところで何してるの。もう、おなかがすいてすいて・・・って何?濡れてるの?」
「あ、いや・・・その・・・こ、この箱を取りに・・・」
「あらっ。桃?早く食べましょうよ」
「お前、身代わり早いぞ・・・」
すぐさま、おときは箱のふたを開けた。もちろん、中には小さな男の子がどんぶらこと眠っていた。
「・・・桃じゃないの?」
「うわ~っ!やっぱり赤ん坊じゃねーか!かわいい男の子だ。よし、俺達で育てよう!子供も欲しかったことだし丁度よかったじゃないか!」
「う~ん。・・・そうね。でも、あんたが育てるのよ。いいね?」
首領はもう、心はウキウキ、顔はニヤニヤだった。
「そうだ、名前を付けよう!何がいいかな。立派な海の男になる為に『海斗』、幸せになって欲しいから『幸平』とか。あ~っ!迷っちゃうな~!」
「桃の箱から生まれたから『桃太郎』で決まりよ」
「はい・・・」

こうして、桃太郎は海賊一味の首領の家で育てられることになった。

          第2章 完



          第三章へつづく


Copyright (c) 1997-2021 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.