第四章 白い約束第4章 白い約束白い肌。大きな瞳。緑色の長い髪の毛。スラリと伸びた手足。そして・・・虎柄の服。年齢は桃太郎より少し上に見える。 「・・・ああ。桃太郎は俺だが・・・?」 桃太郎は、突然の女の出現に戸惑った。恐ろしいものにはとことん強いが、どうも女は苦手なようだ。 「やっと会えたわ。あなたを捜していたのよ」 彼女は意味ありげに笑みを浮かべた。 「え?・・・それ、どういう・・・」 その時、前方から与助の声がした。桃太郎が来ることを知り、迎えに来たらしい。 「ちっ。・・・じゃあ、また会いましょう。約束よ?桃太郎君」 女は何か不都合なことが起きたのか、急に去ろうとした。 「え?あ、あの、君の名は?」 「ラン」 女は瞬く間に姿を消した。桃太郎は、呆然と立ち尽くしていた。 「おーい!モモ!久々の戦利品だってー?」 「あぁ。・・・与助、今の女見たか?」 「女?見てないけど。べっぴんか?」 「なんか、ランっていう虎柄の服の女で~」 「え゛っ。虎柄?・・・そりゃあ、まさか、鬼ヶ島のヤツじゃ」 「鬼ヶ島?」 今ではこの海賊島が、この海一体を支配しているも同然だが、昔は鬼ヶ島の鬼たちが猛威を振るっていたとの噂で、村人たちは大変恐れていたらしい。 では、あの女は鬼ヶ島の鬼の末裔か何かだろうか。確かに格好は普通じゃなかったが。 「でも、見た感じ人間だと思ったけど」 「ツノが生えてたかもしれないぞ~?」 「・・・髪の毛で隠れてた可能性はあるなぁ」 「モモ。お前、鬼に目付けられたんじゃないの?大丈夫か~?」 「・・・」 「おい、恐いのか?」 「そんなわけないだろ!この桃太郎様に恐いものなんて無い!」 「じゃあ、モモが鬼退治しに鬼ヶ島へ行けよ」 「ああ、約束してやるよ!じゃあ、これ持って行きな」 桃太郎は背負っていたかごを下ろし、残っていた数個の柿と梨を与助に手渡した。 「これだけ?俺、わざわざ店を飛び出して迎えに来たのに?」 「悪かったな。でも、俺のせいじゃないぞ。・・・あ!じゃあ代わりにウメちゃんにかんざしをあげよう。もう6つになったんだっけ?本当は母さんにあげようと思ってたんだが。赤くてかわいい・・・あれ?ないぞ!?」 「落としたんじゃないのか?」 「そんなことはない!着物の襟につけてたはずなのに!?あの女に会うまでは確かに・・・あ!あの女だ!あの女が取ったんだ!でも、どうやって・・・?」 「鬼はスリの名人なのかねぇ~。じゃあ、せいぜい鬼退治頑張ってくれよ!」 与助は店へと帰って行った。桃太郎も腑に落ちないがひとまず帰ることにした。 桃太郎が家に着くと、首領が何か白いかたまりを練っている。 「おい、おときも手伝ってくれよ。」 「やだね。こういうものは一家の主が作るっていう約束なんだよ。」 「ああ、桃太郎おかえり。今、父さんがきびだんごを作ってるからね。」 きびだんごはこの島に代々伝わる郷土料理である。特別な時に作られるもので、味は格別。それはもう、旅へ行くなら欠かせないくらい・・・。 第4章 完 第五章へつづく |