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HP de るってんしゃん

卒論 はじめに

はじめに



 大抵のミステリー小説は、ジグソーパズルに譬えられる。しかし、伊坂幸太郎の小説をジグソーパズルと言ってしまうのはどうも物足りない。時系列のズレ、複数の視点、多くの伏線とリンク、それらがピタリと上手く組み合わさった時のこの上ない爽快感。何故かこみ上げてくる嬉しさ。伊坂幸太郎のミステリー小説は、ルービックキューブであると私は考える。二〇〇〇年に『オーデュボンの祈り』でデビューし、二〇〇二年の『ラッシュライフ』で評論家に注目され始め、翌年、七十年代生まれとして初の直木賞候補となった『重力ピエロ』で一般読者に広く認知された伊坂幸太郎。ミステリー小説関連のランキング上位常連者であり、現在直木賞に五回ノミネートされ、映画化、テレビ・ラジオドラマ化、漫画化と話題も多い人気急上昇中の若手作家である。若い世代を中心にコアなファンを生み出しているが、読者層は幅広く老若男女問わず支持されており、「“この作家の新刊だけは必ず買おう!”と思わせる数少ない作家」と言われるほどの実力派。卓抜した伏線処理に定評があり、ミステリー作家と紹介されることも多いが、現在はミステリーに留まらないエンターテインメント性豊かな作品をコンスタントに世に送り出している。なぜ今、伊坂幸太郎が人気なのか。読者は伊坂作品から何を感じ取っているのか。この論文では、大ブレイクを直前に控えた伊坂幸太郎の世界を、二〇〇〇年から二〇〇六年に発表された全ての作品を踏まえて追究していきたいと思う。
 本論文では、伊坂作品に対して肯定的な立場から、作品世界を網羅的に考察する。伊坂作品には特徴的なキーワードがいくつもあるのだが、ここでは伊坂作品を読み解くために一番基本的な四つのテーマに絞り、第一章では「動物と人間がいきる」、第二章では「犯罪で人間がわかる」、第三章では「神様を人間がつくる」、第四章では「伊坂の世界がまわる」というテーマを掲げて論じていく。その中で、第一章では「動物」と「善悪」、第二章では「罪と罰」と「ルール」、第三章では「神様」と「奇跡」、第四章では「人気度」と「リンク」について言及する。なお、本論文の中で引用している伊坂作品の文章は主にファンの読者から“伊坂節”と呼ばれて人気の高い、伊坂幸太郎独特の語り口の箇所である。また、特大付録として「伊坂幸太郎 年譜」を付した。伊坂幸太郎の年譜は二〇〇七年現在本格的なものは未だ世に出ておらず、今回私が書き下ろしたので、伊坂幸太郎の世界への理解を深める材料として参考にして欲しい。


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