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放浪の達人ブログ

遺影

    【遺影】

葬式の遺影写真というものは昔から顔写真のアップである。
大抵は最後に友人知人と旅行に行った時の写真ってパターンが多く、
免許証やパスポートの写真みたいなクソ真面目な顔ではなく
雑誌の表紙でアイドルが爽やかに笑ってるような顔写真が多い。
また、最近の高齢者の遺影では「似顔絵が遺影」という場合もあるらしい。

アジアの国の遺影写真は、どうやら随分昔の写真でも遺影として使うようだ。
かわいい女子高生の遺影が飾られているから誰が死んだのかと思えば
実は婆さんが大往生して、その婆さんの60年前の写真だったという話もある。
なかなか写真を撮られる機会がなかったという事情もあるのだろう。

最近のデジタル処理により顔写真は修正も可能となっている。
親指の爪ほどに写っているフィルムカメラによる撮影の印画紙写真ですら、
デジタルによってピンボケ補正、明るさ補正、アザやシミの除去補正などをして
葬儀用写真サイズにまで大きく引き伸ばしてもきれいな出来になるようである。
もちろんジャージ姿でもスーツに着せ替え可能、背景も自由に選べる。
生きているうちに「ワシの髪の毛ふさふさに画像処理してくれ」と頼んでおけば、
家族は遺言の一部として画像処理の依頼をしてくれると思うから
禿げ散らかした頭髪の人もどうぞ安心して成仏していただきたい。

しかしだ、俺は現在の遺影のあり方について不満がある。
なぜ遺影は故人の真正面アップ写真ばかりなのだろうか?
たとえばミュージシャンが死んだとする。
その場合、マイクを手に叫んでいる遺影だとかギターを弾いてる遺影だとか、
その方が数段かっこいいうえに故人の生きざまが反映されると思うのだ。
ごく普通の人が死んだ場合でも、たとえば犬に頬擦りしてる遺影だとか
花壇に植えた花をうっとり見てる遺影だとかの方が故人のイメージが沸く。
仏壇の前に置かれた遺影を遺族が見る度ごとに、そういう遺影の方が
「ああ、親父は犬が好きだったなあ」とか「母はよく花を育ててたな」とか、
故人の生きていた光景をより描写的に想い出せると思うのだ。
別に真正面を向いてなくてもいい、何気ないスナップ写真でいいじゃないか。

俺の場合、遺影にして欲しい写真がある。もちろんスナップ写真だ。
遺族にお願いしておく。ネパールの古都バクタプルの安宿の窓辺にもたれて
タバコを吸いながら路地を見下ろしている写真を遺影として使って欲しい。
窓の外にはレンガで出来たネパール様式の建物が見えている薄暗い写真だ。
足を窓辺に投げ出したこの横置きの写真で背景カットなし、ぜひこれで頼む。
あ、イケ面に見えるように顔の画像処理も忘れずにな!


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