荷物は軽く【荷物は軽く】俺はアジアへ仕事や遊びで行くことが多いが荷物は至って少ない。 小さなリュックの中にTシャツ、洗顔歯磨きセット、下着、デジカメぐらいだ。 スーツケースは論外である。そもそも持っていない。 旅の楽しさは荷物の軽さに比例すると言っても過言ではない。 随分前、買い付けでタイに行った時に妻からジャスミン茶を頼まれた。 バンコクのチャイナタウンに品質の良いお茶っ葉屋さんがあったのである。 当時の買い付けプランは3泊4日程度が多く、買い付けルートとしては まずチャイナタウンで雑貨を仕入れてから街の中心部の問屋街に移動して、 10数ヶ所で商品を掻き集める行動順位が多かった。 妻に頼まれたジャスミン茶は2キロだった。 2キロといえば牛乳パック2本分、砂糖でいえば2袋分の重さと同じだ。 ところがお茶2キロというのはそんなにコンパクトではないのである。 俺のリュックはお茶2キロでパンパンに膨れ上がり、 お茶っ葉屋のオバさんから「あなたはお茶屋さんか?」と言われ、 「ノーノ―、ツーリスト」なんて答えて不審がられる始末、 その後バスに乗るにも問屋街を巡るにもパンパンのリュックを背負い、 リュックのファスナーが閉め切れずに垣間見えるビニール袋に入ったお茶っ葉は 馴染みの問屋の店員さん達からも「お茶っ葉の行商を始めたのか?」と言われ、 いや、それぐらいなら良いのである、帰国時の空港のX線検査では 「何だコレは!」「ティー、ティー。ノープロブレム」だなんて言ってみたものの、 明らかにヤバいモノと間違われて何度も再検査されたのだった。 同じようなリュックパンパン問題は数年前にも起こった。 妻と2人でタイ北部を10日ほどかけて旅をした時のことだ。 まずチェンマイまで飛行機で行って、それからバイクを借りて(無免許だけど) 田舎を転々と移動するプランだった。もちろん泊まる宿も毎晩違う。 バイクでの移動なので荷物は少ない方が良い。 日本を発つ前に「これも削ろう」などと持ち物はなるべく少なくした。 さてチェンマイに到着、安宿にチェックインしてから市民で賑わう生活市場を探索した。 そこで妻がモフモフ素材の長袖パジャマ上下セットを見つけたのである。 「わ~安い!欲しい!」と言う妻に対して俺は「日本で買えば?」と言ったが 日本じゃこんなに安く買えない、と言いつつ「2着買うから値引きして」と言っておる。 結局モフモフ素材長袖パジャマ上下セットを2着お買い上げだ、しかも旅の初日に。 その日以降、バイクを運転する俺はパンパンに膨れ上がったリュックを胸側に逆背負いし、 もはや走るエアバッグ状態である。前後どちらに跳ね飛ばされても安全だわい。 常夏の南の国タイで長袖パジャマを売る方も売る方だが、買う方も買う方だ。 今年はコロナのせいでアジア放浪の旅が出来ずに残念である。 この騒動が解除されたら手ぶらで身軽な旅をしたいと切に願っている。 |