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放浪の達人ブログ

浮世絵

【浮世絵】

独り暮らしだった親父が長女(俺の姉)と同居することになり
それに伴ってボロ屋敷を解体したことは以前ここにも書かせて戴いたが、
白壁の蔵の中の整理は本当に大変だった。
築130年の家の蔵の中身というとお宝がドッサリという印象があるが
実際にはガラクタばかりで買い取り処分どころか廃棄する物ばかりだった。

トラックやバンを使って廃棄場まで十数回の往復をしたのだが
最後の最後に蔵の片隅から額に入った浮世絵が出てきた。
親父が住む前は料亭だった屋敷なのできっと座敷に飾ってあったのだろう。
それを見つけた時は一緒に片付け作業をしていた妹達に向かって
「出た!お宝発見だ!」と叫んだほどである。

その浮世絵を買い取り専門店に持って行って鑑定をしてもらった。
買取店の店主はルーペを覗き込みながら何度も唸った挙句にこう言った。
「私では真贋の区別がつきません。別の専門店での鑑定をお勧めします」
店から帰る時も「すみません、もう少し鑑定させて下さい」と言いながら
再度ルーペを取り出して首をひねって唸っていた。
うおお、こりゃ一体ゼロが何個並ぶんだ?
もしかしたらテレビのお宝鑑定団への出演も有り得るぞ。
一、十、百、千、万、十万、百万・・・のシーンが目に浮かぶ。

数日後、別の買い取り専門店にその浮世絵を持ち込んだ。
そこでもルーペを覗き込みながら白手袋をはめ直して
「額から外して浮世絵の裏面を拝見させていただきます」と
額縁の爪を丁寧に外していく。いよいよクライマックスだ。
すると浮世絵の裏面には「小学館特製付録」という文字が印刷されていた。
「あ、付録の印刷モノですね、買い取りゼロです」
どうやら最近の印刷技術は素晴らしくなったそうで
ご丁寧にも微妙な立体感を伴った印刷も可能なようである。

こんなもんを額に入れて蔵の隅に保管しとくなよ!と親を呪い、
いや、ほんとは呪ってなんかなくて失笑するばかりであったが、
その浮世絵は岡崎のクリーンセンターの可燃物に他の物と一緒に棄ててきた。
可燃物処理の深い穴に向かって放り投げるとその額縁入りの浮世絵は
ヒラヒラと儚く落ちて行った。同時に俺のお宝の夢も儚く散ったのである。

同じ蔵にあった親父の収集切手を俺が1円スタートでヤフオクに出品したら
8円x5枚シート、つまり額面40円の未使用切手なんかは2万円オーバーとなり、
そんなのがどっさりアルバムに貼ってあって大金が転がり込んできた。
いや、俺にではなく親父にである。
「こんな古切手が売れたら全額親父に渡すわ」なんて言わなきゃよかった・・・。
俺には鑑定の目利きが全くねえな、としょんぼりしながら笑っている。


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