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両国さくらのファッション・イン・ファッション(Fashion in Fashion)

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2006年03月18日
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ファーストリテイリング・グループのリンク・セオリー・ホールディングスが、プラダグループから「ヘルムート・ラング」を買収した。ご承知の通り、同社は先日「ジル・サンダー」も投資会社に売却したばかり。経営資源を「プラダ」と「ミュウミュウ」にフォーカスし経営再建を進めていくことになる。

繊研新聞にはまだ第一報しか掲載されていなかったし、今海外のサイトをチェックしてみたが、そこまで大きな話題にはなっていないようだ。timesonlineによると、買収金額は2,000万ユーロ。日本円にして、28億2,000万円である。2007年春夏からアメリカで商品を発売し、初年度売上高10億円、3年後50億円が目標のようだ。

ファーストリテイリング・グループがラングを買収したことをどのように評価すべきか。私は、同社は非常に収益性が高い会社なので、この程度の出資によって経営全体に大きな影響が及ぶ、ということはないと思うが、事業単体が成功するかどうかは、未知数だと思っている。

ファーストリテイリングは「ヘルムート・ラング」を手中に収めることによって、ラグジュアリーーブリッジ(「セオリー)」-ボリューム(「ユニクロ」)-バジェット(先頃設立された新会社「ジーユー」がダイエー内を中心に出店していくブランド)」の全てのゾーンを押さえることになる。このような企業体は、日本はおろか、世界的に見ても類を見ないものである。

但し、同社が今の時点で成功を収めていると言って良いのは、ボリュームゾーンの「ユニクロ」だけだと見ることも出来る。

ファーストリテイリングの17年8月期の単体の売上高は3,653億500万円、経常利益は582億円、売上高経常利益率は15.9%と、驚異的な数値だ。これに対し、連結は、3,839億7,300万円、586億700万円、15.3%である。

一見、いずれも素晴らしい数値のように見えるが、ここに数字のトリックが隠されている。後者から前者の数字を引き算し、「ユニクロ」以外の事業、「セオリー」、靴の「ワンゾーン」、先般解散が決まった「ナショナル・スタンダード」等を合わせた収益性はどうか。売上高186億6,800万円、経常利益4億700万円、売上高経常利益率2.2%。

「ユニクロ」以外の事業だけだと、例えばオンワード樫山の17年2月期(売上高2,712億7,300万円、経常利益262億8,300万円、売上高経常利益率4.1%)、ワールドの17年3月期(2,451億9,300万円、経常利益率164億900万円、売上高経常利益率5.1%)に劣るレベルになってしまう。まあ、赤字企業も多いファッション業界にあっては、普通以上、そこそこ良いレベルだが、飛びぬけて優秀だとは言えないだろう。

同グループは、今のところはまだ、「ユニクロ」という革新的なビジネスモデル1つの収益性の高さに頼っている。これ1つだけでも十二分に優れている企業だと高く評価は出来るのだが、次の成功モデルの創出はまだこれから、という状態にあると見るべきなのではないか。

次に、同社が参入しようとしている世界のラグジュアリーブランドの業界について考察してみよう。

一般論から言って、ズバリ、アパレル中心のラグジュアリーブランドを成功に導くのは極めて難しい、というのが、私の考えだ。そういう意味では、ラングの買収も、相当にリスキーなビジネスであることは間違いない。

ラグジュアリーブランドの勝ちパターンというのは幾つかあって、a.1,000万円以上の単価の高い商品で超富裕層を狙える宝飾、時計のブランド、b.同じ型番で数を出すことが可能な雑貨+アパレル、c.雑貨同様、ミドルアッパークラスに数を売れる化粧品+アパレル(「シャネル」)、d.時計、宝飾でも、超富裕層、富裕層だけでなく、ミドルアッパークラスに数を売る戦略もある、e.アパレル発だが、アイテムを雑貨、インテリアにまで拡大、場合によってはセカンドブランドやライセンスブランドも発売して、ライフスタイルブランドとしての訴求を図る(「ラルフ・ローレン」等)、などが常道だ。

1つのポイントは、1点単価が1,000万円以上の時計、宝飾以外では、「ラグジュアリーと銘打ちながらも、まとまった数の出るキラーアイテムを持っている」ことである。

アパレル中心のブランドであっても、少なくとも欧米人が習慣的に使用する香水は発売する、というのもお約束だ。

これに対し、アパレルというのは、極めて難しい領域である。そもそも、プライスゾーンの高いところで、「数を売る」というのは、逆にタブーになってくるからである。ほら、よくオスカーの授賞式で、女優さんが同じドレスを着ていた、なんてゴシップ記事が出ているじゃないですか。パーティーの場なんかで、バッグが同じ、なら良いけれど、ドレスが人と同じ、っていうのは一番プライドが傷つくことになってしまいますからね。

比較的安定感がまだあるのは、「アルマーニ」とか「ダナ・キャラン」とか、年齢層の高いエグゼクティブの女性を狙っているブランドである。仕事着としてのスーツのバリエーションと、パーティー用のドレスの双方を充実し、困った時にいつ駆け込んでも何かしら買えるものがある、という品揃えになっているからだ。

その点、ヤングやヤングアダルトを狙ったブランドは、常にボリュームゾーンのトレンドをも牽引するくらいのパワー、新規性を求められるため、大変な分野だ。ここで勝てるかどうかは、正直、デザイナーの資質に負う部分が大きいだろう。

話を「ヘルムート・ラング」というブランドそのものの可能性にフォーカスしよう。このブランドの創始者であり、2005年にブランドを追われたラング氏本人について、私がお世話になっているあるデザイナーさんが以前このように評していたことが忘れられない。

「ラングって、ホント、仕事しない人だよね(笑)」。

これ、ご本人に合った訳ではないので断言は出来ないのだが、確かに彼の過去の仕事振りを見ていると、言われてもしょうがないかな、という感じではないだろうか。確かに、1980年代の後半、彼が世に出始めた頃は、イタリア風ともフランス風とも違う、ドイツ人らしいミニマリズムは非常に斬新で衝撃的であった。しかし、気をつけなければならないのは、「ミニマムでアバンギャルドだからかっこいい」のであって、ミニマリズムはあっという間に単なる退屈、コンサバに転落しやすい、ということである。

しかし、単一の素材を使いまわしバリエーションで見せる、スーツを核にしたブランド、というコンセプトは、「セオリー」にも相通ずるもので、非常に興味深い。「ヘルムート・ラング」-「セオリー」-「ユニクロ」と、ファーストリテイリング・グループらしい、ある種の軸がはっきりと通っているようなので、これは、ひょっとしたらひょっとするか、という期待は抱かせてくれるに十分だ。

「ヘルムート・ラング」から、失敗した時は早く撤退すればよい。同社の場合、損切りはいつも非常に速いのであまり心配することはないだろう。

成功させるためのポイントは4つ。

1つは、まだ決定していないデザイナーの選定。実は、これが一番難しい。他にもデザイナーを探しているラグジュアリーブランドは多いが、限られた優秀な人材の取り合いになっているように見えるからだ。

既にどこかの主任デザイナーになっていない、アシスタントクラスからの抜擢というのもあり得るが、海外のファッション業界に人脈を持っていないとまず情報収集からして難しいのではなかろうか。

大穴か、と思われるのは、日本人デザイナーの抜擢である。これはありえないことかもしれないが、山本耀司氏、なんてのはいかがでしょうか?

「ヨウジ・ヤマモト」は「ラング」とは似て非なる要素が強いのだが、無印商品における覆面デザイナーとしての実績や「Y-3」などを見ても、実は他社さんとのコラボになってくるとデザイナーとしてのレベルの高さがむしろ際立つな、と思えてならない。やはり、本質からデザインに切り込める数少ない人材なのだ。

辞めたラング氏が激怒するかもしれないが、私がファーストリテイリングの経営幹部だったら、柳井社長に進言し、一度は耀司氏の所にお願いに行きますね。コレ、冗談ではなく、本気です。耀司氏によるパロディとしてのラング。嗚呼、マジで見たいっす。

第2は、広告宣伝部門の人脈。元々「セオリー」も、日本ではここで成功した部分が大きいと思うのだが、まずアメリカ発で展開していくとなると、もう一段スケールの大きい経験を持つ人材が必要だろう。

日本に入れる際にも、LVJ(「ルイ・ヴィトン・ジャパン)」)さん辺りからヘッドハンティングしてくる必要も出てくるのではなかろうか。

第3は、ラングは元々のブランドイメージが若向きなものだが、若く、シャープなデザインのスーツと合わせて、レディスに関してはラグジュアリーブランドらしいワンピース、ドレスのラインアップも充実させること。

また、メンズは思い切って「セオリー」よりは相当にセクシーな方向に振り、シルエットも細身にするのが今風だろう。

第4は、実はこの部分がこのブランドの一番のウマみだとファーストリテイリングは見ている可能性が高いが、今はダウントレンド気味になっているデニムを、タイミングを見て、メンズ・レディス双方で再度フレッシュなイメージで投入すること。

結論だが、ファーストリテイリングは、日本のファッション系企業において、海外、それも欧米圏に本気で進出しようとしている初めての企業であると言っても良いのではないか。

日本の大手アパレルのうち、現在、ワールド、イトキン、サンエーインターナショナルは中国などアジアへ販路を拡大している。また、オンワード樫山はアジアだけでなく欧米にもブランド買収や自社オリジナルでも進出を進めているが、どちらかというと「海外のものを日本に持ち込む」という動きの方が主体だ。

これらの企業の場合、いずれも、日本国内で日本独特の商慣習やビジネスモデルを形成しそれに大きく依拠している、という弱みを持つ。

ファーストリテイリングのビジネスモデルはシンプルで、経営の意思決定は極めて速い。柳井社長のワンマン、という見方も出来ようが、マネジメントチームの中には、他産業出身の優秀な人材も数多い。

現在、急速にアパレルのプロも優れた人達が集まってきているようなので、こうやって果敢な挑戦を行っているうちに、2、3年で本当に日本のファッション業界で最強最大の企業に育つ可能性が高まってきた。レベルの高い目標、レベルの高い仕事が、人材を鍛えるからである。仮に、「ヘルムート・ラング」事業が失敗したとしても、財務的なゆとりを持って難易度の高い新規事業に挑戦できる、ということは、こんなに教育効果の高いものはない。

この間、日経BP社の『日経アソシエ』に、同社の女性社員活用の話が出ていたが、トレンドではなくスタイルを打ち出すビジネスモデルで、人材の使い捨てもない、となると、専門職のプロにとっても働きやすいことこの上ないですしね。若い頃しか働けないような不安定さがない、というのは、中長期的に見て大きな大きな強みですよ。

ダイエーさん内の新業態が成功すれば、ライバルは完全に海外の有力SPAだけでしょう。

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最終更新日  2006年03月19日 01時01分16秒
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