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Ryu-chan6708

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2006.10.03
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カテゴリ:読書感想

:「ダヴィンチコード」の進行はどうだい?

A氏:いや、面白いね。
 確かによくできたミステリィだ。
 つい、没頭してペースがあがり、文庫本の上巻を読み終えた。
 37章まで完了だね。

:何か疑問点はあったかね。

A氏:あまりなかったが、よく分からない点が数箇所あるね。
 まず、6章の真ん中へんだ。
 異教paganの語源が「田舎に住む者」という説明があるね。
 ところが、すぐvillagevillainという英語が出てくるのでつながりがわからない。

:これは、villainという単語が悪党を意味するという事前知識がない日本人にはすっきりしないかもね。
 原書では村人を意味するvillagerがvillainとなったとあるね。
 訳のほうでこのvillagerがカットされているのでわかりにくいかもしれない。
 要するに、田舎の人は習俗的な信仰をもっているのでキリスト教徒には異教徒とみなされているということを言いたいだろうね。
 その強調として、pagan以外に「villain」(悪人)という語源も「田舎者」だったと言いたいんだろう。
 気がついたんだが、原書ではvillainはvilainとエルが一つ抜けているんだ
 こういう英語は見当たらないね。
 ミスプリかね。それともフランス語なのかね。

A氏:少し進んで、五芒星の意味をラングドンが警部に説明するところがある。
 ここでラングドンが「象徴というものは耐性が強いものですが」と言っているが、これがピンとこない。
 耐性というのは物理的な用語だよ。

私:英語はSymbols are very resilientだね。
 この場合、symbolは五芒星をイメージしているんだね。
 日本語的には、和製語になっているシンボルのほうが分かりやすいかもしれないね。
 resilientは、英和辞典では「(圧縮に対して)弾力のある、はねかえる」「(不運・病気などから)立ち直り(回復)の早い;快活な」とあるね。
要するに、ここでの意味は、抵抗に強く、持続的な性質があるという意味だね。
 日本語的には「変化に強い」ということかね。
 いろいろな荒波にも耐えて維持できる性質があるということかね。

A氏:8章だ。
 ドラコンが出てくる。
 「ドラコンとファーシュならばそりが合ったのではないかとラングドンはふと思った
 ドラコンは紀元前七世紀の冷酷な政治家だよ。
 なんで警部と気が合うの?

:これは、冷酷な警部に対する皮肉だよ。
 念のため、この部分の英語を引用する。
 Draco and Fache would have gotten along well.
 アレッ、訳文はドラコンだね。
 英語はドラコだよ。
 英語には「ン」がないね

A氏:次は20章だ。

:オッ、とんだね。
訳は好調だね。

A氏:ラングドンが教室で生徒に黄金比を教えているところだ。
 ステットナーという学生が「黄金比はHがあるおかげで、PIよりずっと切れ者だってね」とあるが、これは私立探偵より切れ者ということかね。
 なんで私立探偵が出てくるんだね。

:ここの英文は PHI is one H of a lot cooler than PI! だ。
 数学専攻の学生だから、PIは私立探偵でなく、ギリシャ文字でおなじみの円周率のパイを意味すると思うね
 だから、これはこの教室ではPIはピー・アイでなくてパイ、PHIはファイと発音しているんではないかね。

A氏:あぁ、パイΠは円周率の3.14、じゃ、PHIは?

:これもギリシャ文字にあるファイΦだね。
 製造業では、日本では円の直径を示すのに使うが、黄金比を示すときにも使う。
 君に言われて、英文を確認したんだが、訳していない部分があったね。
 それは、「後方の席にいる脚の長い数学専門の学生が手をあげた。『PHI。黄金比です。』」というところだ。
英語は次のようだね。
 A long-legged math major in back raised his hand. “That’s the number PHI.” He pronounced it fee.
 この最後のイタリックスになっている「フィーと発音した」の訳がないね。
 ピー・エッチ・アイという発音ではないんだね。

A氏:ではこの訳は「私立探偵より切れ者」という意味でなく、「黄金比は一般学生が知っている円周率よりいかす数字」だという意味になるね。

:そうなるね。
 君が疑問に思った通り、話の流れで私立探偵はどうかと思うね。

A氏:34章だ。
 アリンガローサ司教が城に着いたとき、若い司祭が挨拶する。
 それに対して「そいつはけっこうだ」とあるね。
 どうもこれがピンとこない。
 その後、「本末転倒したのはいつのことかね」とある。

:「そいつはけっこうだ」の英語はgood for youで慣用句だね。
 「でかした;うまいぞ、やるねえ」という意味で、「意外な気持ちを抱きながらも相手の健闘をたたえるもの」と辞書にある。
 この場合、若い司祭が天文学者でもあることを誇らしげに言っているので、そう返事したのではないかね。

 「本末転倒」のほうの英語は面白いね。
 when did the tail start wagging the dog?
 正常なら「犬が喜んでシッポをふりだした」でthe dog started wagging the tail.だが、逆に「シッポが犬をふりだした」になっているんだね。
 本業の信仰を忘れ、枝葉の観光に力を入れている状態を皮肉っているのだろう。

A氏:明日から文庫本の中巻に入る。
 またよろしく頼む。
ダ・ヴィンチ・コード(上)






Last updated  2006.10.09 16:19:16
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