知的漫遊紀行

2017/11/20(月)20:31

「『技能実習』建前に限界 帰国者大半、関係ない職」20日朝日新聞

私:技能移転を目的とし、途上国の外国人を期間を区切って研修生として日本に受け入れる「技能実習制度」があるが、「制度の『建前』は『途上国の発展に寄与』、本音は『最低賃金以上での一定期間の労働力確保』」という声もある。   A氏:実習を終えた帰国者の9割は、日本の経験とは関係のない仕事をしているともいう。   今月1日に施行された「技能実習適正化法」は、実習生の技能習得を促進する態勢を手厚くしたが、母国で生かさないと意味がない。   私:途上国側の「送り出し会社」、日本側の監理団体といった複数の仲介者がいるために「建前」を支えるコストは小さくない。  実習生は、大半が来日前に、「送り出し会社」への手数料や同社に紹介してくれた人への謝礼などで、多額の借金を背負っていた。   A氏:今月からの新制度では受け入れ企業の負担が増す。  それは、国が、実習生に対する違法な長時間労働やパスポート取り上げなどの人権侵害行為を防止し、技能移転を促進する目的で、「外国人技能実習機構」を新設したからだ。 このため、受け入れ企業は一人一人の実習計画について機構の認定が必要になり、手数料が取られる。   私:負担は実習生と直接は関係がない納税者にものしかかる。 機構は3月、常勤150人、非常勤120人で発足し、人件費約20億円は国の交付金約35億円(今年度)で賄い、約14億円は一般会計からの支出。    新制度では、優良な監理団体の受け入れ枠が広がり、実習年数の上限も3年から5年に延び、制度の対象に「介護」も加わり、実習生は約25万人(6月末)から急増する可能性が高い。 そうなると、機構の仕事が増え、投入される公金が膨らむ事態が想定される。   A氏:政府の全額出資で設立された「外国人技能実習機構」は、税金が無駄遣いされていないかを調べる会計検査院の検査の対象となる。 検査院局長の経験がある有川博・日大教授は「技能が移転しなくても良いのだとすれば、これほど『建前』と本音が背離した政策は聞いたことがない。建前をそのままに次の施策が展開されるとしたら茶番だ」と指摘。 「政策の効果をしっかり把握するよう求められるだろう」と話す。   私:このような外国人受け入れの場当たり的な対応は、社会不安を引き起こす恐れさえある。   非熟練の単純労働者の受け入れについて急増しているのが「技能制度」による「技能実習生」。 産業界の人手不足の悲鳴に押されて間口をどんどん広げており、「将来どれだけの人数になるか分からない」(厚労省)。 英国にあるような全体的な外国人受け入れ政策に責任を持つ行政機構もない。   A氏:労働力不足の根っこにあるのは急速な人口減。 減少のペースを緩やかにしないと、あらゆる産業が縮み、既存の社会システムを維持できなくなるが、実習制度が当面の人手不足感を和らげ、「人口減」に真正面から取り組む機運をそいでいる。 実習制度という「茶番」に幕を引き、秩序だった外国人受け入れ策に踏み出すときが来ているようだ。   私:昨日のこのブログでとりあげた「エマニュエル・トッド、国力より『自分』を選んだ国・日本」で、トッド氏は「日本は明らかに人口減少を受け入れていて、国力を維持するより、自分であり続けることを選んだのでしょう」と指摘している通りだね。   A氏:トッド氏は経済のグローバル化の基底にある個人主義に適応しにくいのに無理をしたツケが日独ともに出生率の急激な低下という現象を招いたといい、少子化の試練に、ドイツは「外向き」で大量の移民や難民受け入れに走る。   逆に日本は「内向き」。   私:「技能制度」に「内向き」の本音が見えるね。   しかし、「外向き」のドイツでも、19日、次期政権の樹立に向けた連立交渉が決裂。 難民や家族の受け入れなどをめぐって、関係各党の意見が折り合わなかったからで、「外向き」にも問題が出ているね。 日本はトッド氏のいうように「内向き」のまま、進むのかね。

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