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りゅうちゃんミストラル

2008.12.28
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カテゴリ:読書
先日、東野圭吾の「変身」を読んだ。
(この記事はネタばれあり)

     

もし自分が少しずつ失われていくとしたら・・・。
もし「自分の中にいるもう一人の自分」に占領されるとしたら。
その恐怖を描いた作品がこれだ。

成瀬純一は両親をそれぞれ病気で失った。
いわば天涯孤独の青年だ。
工場で油まみれで働く。いつでも控えめに。
それが彼の姿だった。

しかし部屋を探すために訪れた不動産屋で強盗事件に巻き込まれる。
取引のために店が用意していた2億円を、犯人は狙っていた。

純一と同じく、客として来ていた婦人の幼い娘。
彼女に銃口が向けられた時、純一は彼女をかばおうとして頭部を撃たれる。

普通なら死ぬところだったが、堂元博士によって助けられる。
純一は他人の脳を移植された。

世界初の成人脳移植手術は無事成功したと思われた。
しかし純一は徐々に性格が以前とは違ってくる。
絵を描くことが好きだったのに以前のように描けなくなる。
感情的になりやすく、職場でも人間関係が壊れる。

それでも堂元博士とその助手たちは「異常なし」と主張。
純一は脳を提供したドナーについて自ら調査を始める。

「変身」は改めて言うまでもなく医学がテーマになっている。
著者の東野は大学工学部を出てはいるが医師ではない。
こうした内容の小説を書くには専門的知識に欠ける部分があるはずだ。
しかし私が感じるには、「医師でないこと」が小説を面白くさせている。

医学界での問題点は、象牙の塔だけで話すべきことではない。
「素人としての観点」こそが求められる場合がある。

私がこの作品を読むにあたって気がついたことは以下の点だ。

1、「欠損家族」の描き方。
2、純一は脳移植手術を受けるべきだったのか?
3、最後に出てくるが、「人の死とは何か」という疑問。

1については、宮部みゆきを思い出す。
彼女が描く主人公は「欠損家族」の中にいる。
家族が欠けているということ。
それは、人物を描く側にとっては便利なのかもしれない。
足りない部分を文字で表現することができるからだ。
東野は別の作品でも主人公に「欠損家族」という環境を与えてはいなかったか?
「欠損家族」は宮部の専売特許ではないということだ。

また、「自分が自分でなくなる」という内容について。
これは村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出す。
「世界の終り・・」は二つのことが同時進行するという内容。
「計算士」の「私」が私には純一と重なって見えた。

脳移植手術の是非については人によって考え方が違うだろう。
「何としても生きていたい」と考えるなら、手術を受けるべきかもしれない。
しかし、「自分が自分でなくなる」という恐怖感は厳しいものがある。
しかもドナーが誰であるか秘密にされるようでは二重の苦しみだ。

「人の死とは何か」という疑問についても、いろんな意見があるに違いない。
自分の脳とドナーの脳が半々であったなら。
その人はどちらなのか?
さらに、自分の脳が2割でドナーの脳が8割だとしたら。
それは自分と言えるのか?
純一や恵の疑問は私の疑問でもある。
医学の発達は、そのうち脳移植を可能にするかもしれない。
以前は不可能だった心臓移植が可能になったように。

破壊されていく純一の心。
そして彼を支えようとする恵の献身的な対応。
苦しみが痛い作品だった。

この作品が発表されたのは1991年。
「放課後」が88年だから初期の作品と言える。
東野がすごいのは、作家としての磨耗を感じさせないこと。
いろんな分野に手を出し、多くのファンから高い評価を得ている。
最近では、「ガリレオ」シリーズがドラマや映画にもなった。
「容疑者Xの献身」では直木賞も受賞した。



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最終更新日  2009.01.06 19:59:37
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