りゅうちゃんミストラル

2009/01/22(木)16:07

北村薫「ターン」

読書(143)

北村薫「ターン」を読んだ。 (この記事はネタばれあり)       正直、私は北村薫の作品が初めて。 どうして今まで読まなかったのかが不思議なくらい。 「ターン」は読みごたえのある、読んで損はない作品だった。 29歳の売れない女性版画家が主人公。 彼女は子どもたちに美術教室を開いている。 ある日、教室で使うダンボールをもらいに車で出かける彼女。 7月の暑い夏の日だった。 大通りで彼女は事故に遭い、乗っていた軽自動車は横転。 その時点から、彼女はもうひとつの世界へ入ってしまう。 事故が起きた午後3時15分になると前日に戻るその世界。 人は自分以外誰もいない。 犬や猫までいない世界で彼女の生活が始まる。 それがかなりのページまで続く。 異色のミステリー小説は、この時点まで読めるかどうか。 それにかかっている。 もし、この時点まで読めれば最後まで読むのは容易だ。 そして150日目に家の電話が鳴る。 電話をかけたのは、彼女の作品を買った男性。 自分だけの世界からこの「ホットライン」だけが世界へ通じる。 実際の世界で彼女は病院にいた。 事故以来、眠ったままの彼女。 彼女は元の世界へ戻れるのか? この小説で思い出したのがあるアニメ映画。 うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 「うる星やつら」の場合は、何人かの仲間が一緒だった。 孤独を感じなくて済むのは「ターン」とは違う。 永遠に繰り返される毎日。 それを望んでいる人はいるかもしれない。 何しろ、本は読み放題。 時間無制限でやりたいことができる。 私も、この世界に行きたいと思う。 そうすれば、「失われた時を求めて」など長編作品を読めるから。 もちろんデメリットもある。 それは他人と触れ合えないこと。 よく、こんなことを言う人がいる。 「人は一人では生きていけない」 確かにそうだ。 毎日、午後には昨日に戻ってしまう。 話し相手すらいない。 (主人公には話し相手はいる。その正体がわかるのはかなり後になってから) 彫刻の作品を残すこともできない。 日記も書けないのでは面白くない。 人はどこかに「自分の存在」を残しておきたい生き物だからだ。 作者の主張がわかるのは、残りページが少なくなってから。 決して斬新ではないが、テーマとしては納得できるものだった。 北村作品なら、次は「スキップ」になるのだろう。 どこかで調達しなければ。 バナーにクリック願います。    ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。

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