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りゅうちゃんミストラル

2009.01.26
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カテゴリ:読書
海堂尊「ブラックペアン1988」を読んだ。
(この記事はネタばれあり)

     

「チーム・バチスタの栄光」に始まる医療現場のシリーズ。
バチスタ以前に東城大学医学部付属病院で何があったか。
それを描いたのがこの作品。いわば「エピソードゼロ」。
読者はどの時点でこの作品を読むのか。
それによってこの作品に対する感想もだいぶ違ってくる。

病院がその後、どうなったかは以下の記事に書いた。

海堂尊「ジェネラル・ルージュの凱旋」

海堂尊「ナイチンゲールの沈黙」

「バチスタ」で病院長の高階権太。
「ブラックペアン1988」では腹部外科を専門とする講師。
しかも東城大学の出身ではなく帝華大からやって来た「よそ者」。
当時東城大学の外科は佐伯教授が仕切っていた。
助教授は黒崎。

高階はマサチューセッツに留学していた。
最新の医療機器を東城大に持ってくる。
それが食道自動吻合器「スナイプAZ1988」だ。
高階はこの機械を使って多くの外科医に手術を行えるよう改革を目指す。
日本では、若い外科医が難しい手術を行うのはあり得ない。
それは、医療界にとって全体の技術底上げにならない。
外科の技術向上にはある程度の手術件数が必要だからだ。
だが、外部から来た高階に対し医局内は批判的。
医局に10年いて昇進を断ってきた渡海。
「手術室の悪魔」と呼ばれる彼もまた高階に冷たい目を向ける。

「白い巨塔」でも描かれた、日本医療界の閉鎖性がここでも見える。
88年当時、否定的な意見が多かったがん患者への告知も指摘されている。
田口が渡海の告知に批判的だったからこそ、その後の進路が決まった。
そう考えるのは私だけではないだろう。

高階は手術前のムンテラ(患者への説明)で、こう言う。

「絶対に手術を成功させます」

それに対し、渡海は手術のリスクを説明すべきだと批判的。
今でも医師によっていろいろな考え方があるテーマだろう。
正直私も手術に絶対はないと考える。
「開腹してみたらすでに手遅れだった」ということもある。
「白い巨塔」の主人公、財前五郎。
彼もまた癌専門医でありながら手術不能にまで進行した癌で死ぬ。
ブラックペアンと時代は違うものの、外科医は神じゃない。
術前の検査で転移がわからないこともある。

その後、助手として「チームバチスタ」に入る垣谷もここに登場。
彼は新入医局員に対して厳しいが、「鬼軍曹役」としては最適。

今回の主人公は世良雅志。
外科医一年生の研修医。指導医が高階。

この作品には藤原、猫田、花房の各看護婦も登場。
3人とも手術室勤務で藤原は婦長。
猫田は主任で勤務中の居眠りを藤原に見つかって怒られている。
この人が総看護師長選挙に出るなどとは誰も思わない。
それでも「千里眼」の片鱗を見せている。
花房が初めて手術室で機器出しをするというのも逆に新鮮。
世良と花房のデートも初々しい。

この作品では世良が指導する学生が3人登場する。
その3人というのが速水、島津、そして田口。
5日間の研修で彼らのレポートはすごかった。

田口は研修で外科医に向いていないことを知る。
何しろ手術室で倒れてしまったのだから。
島津は、大学病院の診断がいかに非合理であるかを主張。
そして速水は一行だけ。

「すぐに追い抜きます」

これには笑ってしまった。
先輩の世良に対して何とも生意気な学生だ。
その後、速水は「ジェネラル・ルージュ」として君臨。
救命救急の部長となる。
若き日の高階が速水と似ているのは興味深い。
「ルールより患者の命」というのは当たり前。
だが、すべての医者がそれを守っていたらどれだけの命が救えるか。
特に閉鎖的な大学病院では、ルール破りする者は切り捨てられる運命。
それが現実だ。

島津は放射線科の助教授。
病院で子どもたちに「がんがんトンネル魔人」と呼ばれている。
説明不要だろうが、その後田口は不定愁訴外来を担当する講師に。
「グッチー」、「行灯」と呼ばれその後のシリーズで活躍。

患者の体内に手術用具を置き忘れるというアイデア。
これは外科医をテーマにした漫画「ブラックジャック」でもあった。
この漫画では、主人公の体内に、外科医がメスを置き忘れていた。
ブラックペアンでは、それをもう一捻りしている。

この作品は、単なる「おまけ」ではない。
「螺鈿迷宮」や「ナイチンゲールの沈黙」と比較しても面白い。
十分に医療ミステリーとして成り立っている。
今までとは違い、白鳥が出てこないがそれはそれで面白い。
うんざりするロジックがないのもたまにはいいだろう。

もうひとつ興味深いのは1988年の文化。
アニメ「トトロ」や「サラダ記念日」が登場する。

ところで世良はその後どうしたのか。
藤原看護師と高階病院長はどこで仲良くなったのか?
いろいろ疑問は多い。

海堂尊を読むとしたら、次は何だろう。
以下の候補作品がある。

     

東城大学、というより「桜宮シリーズ」はまだ終わりそうもない。

***********************
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ブラックペアンに学ぶ。



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最終更新日  2009.01.29 13:10:14
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