2010/09/13(月)21:19
「外科医 須磨久善」海堂尊
海堂尊の「外科医 須磨久善」を読んだ。
外科医須磨久善価格:1,200円(税込、送料別)
著者の海堂尊は現役の医師。
と同時に「チーム・バチスタの栄光」でも知られる作家でもある。
須磨久善は日本で初めてバチスタ手術を行なった外科医。
バチスタ手術とは、肥大した心臓を小さくする手術のこと。
拡張型心筋症を外科的に治療する方法だ。
この術式を発案したブラジル人の外科医バチスタに由来する。
本来、拡張型心筋症は心臓移植が有効。
だが移植するための心臓を待つ間に患者は死んでしまう。
そのためにバチスタ手術は生き残っている。
少なくとも日本では。
須磨の歩んだ道は、日本人医師としてはかなり変わっている。
大阪医大を出た後は虎ノ門病院で経験を積む。
順天堂大、大阪医大を経て胃大網動脈をグラフトに使ったバイパス手術を考案。
世界で初めて成功させる。
その後、三井記念病院で循環器外科科長⇒心臓血管外科部長。
ローマ・カトリック大学客員教授として活躍するも帰国。
そして日本ではバチスタ手術が待っていた。
須磨のバチスタ手術はNHKの「プロジェクトX」で取り上げられた。
01年に放送されたこの番組は感動的だった。
初めてのバチスタで患者は術後肺炎のため死亡する。
患者の家族からは「バチスタを続けてほしい」という手紙をもらう。
次に失敗したら、日本でバチスタはできなくなる。
だが次の患者を救った須磨。
世界的に見て廃れるバチスタだったが、日本では生き残った。
須磨の帰国に徳洲会の徳田虎雄が深く関係していることは知らなかった。
葉山ハートセンターも徳田がいなければ完成しなかったプロジェクトだ。
須磨は自分で進む道を選んでいるようでいて、実は違うのかもしれない。
医師を目指した点。そして虎ノ門病院を出たのは自分の判断。
だが日本で初めてのバチスタ手術はどうなのだろう。
彼は目に見えない運命に従っている部分もあるのではないか。
孫悟空が釈迦の手のひらから出られないように。
日本は先駆者(本書では「破境者」と呼ぶ)に冷たい。
海堂はそのことをこの本で訴えている。
この点は医学だけではない。
多くの分野で先進的なアイデアが実現できないのはこうした土壌があるから。
私は以前、このブログで以下の本を紹介した。
「ブレイズメス1990」海堂尊
↑この作品の主人公、そして心臓外科の土台は須磨がモデルとなっている。
そして、以下の作品もまた同じ。
海堂尊「チーム・バチスタの栄光」
↑須磨は「チーム・バチスタ」映画版で医事監修を担当。
私は映画版より連続ドラマのほうを高く評価している。
ドラマ「医龍」でも医事監修は須磨だ。
そういえば「医龍」もバチスタ手術がテーマだった。
須磨はすでにフィクションより先を行っているのか。
読む順番だが、私は本書を先に読むべきだったのか。
フィクションとノンフィクション。そして手品とそのタネ。
「ブレイズメス」と本書はその関係にある。
どちらにしろ、外科医として須磨の活躍ぶりはフィクションに劣らない。
そのことははっきりとここに記録したい。
なお、本書はドラマとして先日放送された。
私は見ていないが、須磨役は水谷豊だったそうだ。
***********************
関連記事
『外科医 須磨久善』 海堂尊 著
↑この作品に関するブログ記事。秀逸なのでこの場で紹介したい。
須磨が医大受験するために高校を休んで受験勉強するエピソード。
「自分が自分の行為をどう思うかの方が大切」という言葉も記憶に残る。
外科医 須磨久善
【書評】「外科医 須磨久善」海堂 尊
「外科医 須磨久善」 海堂尊
海堂 尊『外科医 須磨久善』
***********************
※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。
バナーにクリック願います。
***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。
その場合リンクは必要とはしません。
意見があればメッセージでどうぞ。
ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。
今のところメッセージは全て読んでいます。