東野圭吾「聖女の救済」
東野圭吾「聖女の救済」を読んだ。「ガリレオの苦悩」とともに「ガリレオシリーズ」の新刊だ。(この記事はネタばれあり) 実業家の真柴義孝が自宅で死んでいた。コーヒーに入っていた亜ヒ酸による中毒死だという。その時、義孝の妻である綾音は札幌近郊の実家にいた。綾音はパッチワークで有名で、教室も持っていた。遺体の発見者は綾音の弟子である若山宏美。義孝は死ぬ前にレストランの予約を2人分入れていた。このことから自殺の可能性は考えられない。実は、義孝と若山宏美は不倫の関係にあった。子どもができないことから、真柴夫婦の間には亀裂が生じていた。義孝は子どもを作るために結婚したのだった。捜査一課の草薙は綾音に惹かれる。捜査は難航した。完璧とも言えるアリバイが綾音にはある。若山宏美も義孝を殺すことは考えにくい。どこから亜ヒ酸をコーヒーに混ぜたのか?それからして大きな謎だ。札幌、広島と捜査は拡大する。操作を担当した内海薫は帝都大学の湯川学に協力を求める。「変人ガリレオ」の登場で、事件は解決に向かうと思われた。だが湯川の頭脳を持ってしてもこの事件解決までには大いに悩む。正直に感想を書く。「ガリレオ」の続編ということで、この作品もかなり売れるだろう。だが、今までの作品と比較すれば薄いというか、底が浅い。まず、犯行の動機に疑問を感じる。何より読者を惹きつける魅力も乏しい。「容疑者Xの献身」で共感した読者は失望しただろう。確かにトリックは意外性があった。ただそれが読者を納得させるものではなかったということだ。また、殺された真柴義孝は死ななければならなかったのか?批判されて然るべき人物ではあったが、死ぬほどのことかと思う。ミステリーでは「死に値する行為」というのもがしばしば度外視される。「聖女の救済」でもそれは当てはまる。そう考えるのは、私が男だからか。また、内海と草薙のやり取りにも疑問あり。係長の間宮、草薙の考え方は捜査陣として失格。実際、日本の警察はこの程度ではないと信じたい。鋭い観察眼を持つ女性刑事、内海が登場するこの作品。ドラマでは柴咲コウが演じていた。だが、ドラマよりも内海はしっかりしている。捜査一課に抜擢された理由もわかる。捜査のため、広島県に向かう内海が福山雅治のアルバムを聴く場面。東野が見せた茶目っ気だ。私は読む順番を間違えたのかもしれない。「聖女の救済」より先に「ガリレオの苦悩」を読むべきだったかも。バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。その場合リンクは必要とはしません。意見があればメッセージでどうぞ。ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。今のところメッセージは全て読んでいます。