2009.01.16

重松清「その日のまえに」

カテゴリ:読書
重松清「その日のまえに」を読んだ。
(この記事はネタばれあり)

     

この本は連作短編集。
タイトルは以下のようになっている。

「ひこうき雲」
「朝日のあたる家」
「潮騒」
「ヒア・カムズ・ザ・サン」
「その日のまえに」
「その日」
「その日のあとで」

すべての作品は、人が死ぬ「その日」を底辺に進行する。
「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」はつながっている。
だがそれだけではない。
「ひこうき雲」に出てきた美代子は看護婦になって後に重要な役割を果たす。
私が末期ガンなら、美代子いる病院に世話になりたい。
「潮騒」も同じように「その日のあとで」の伏線になっている。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」の親子も後に登場する。
まったく関係のないと感じても、「どこかで繋がっている」のが面白い試み。
(「朝日のあたる家」が他のエピソードとどう繋がるか分かりにくい。
だが、分かると思わず手を叩いてしまう)
この本がきっかけとなって、看護師を目指す人がいるかもしれない。
高校生の息子が介護を目指すように。
そのくらい印象に残る話の連続だ。

「朝日のあたる家」の先生もキャラクターが面白い。
夫からは暴力を受け、万引きをしてしまう元教え子の話は切実。
でも先生の前向きさは救いになった。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」の親子には笑わせてもらった。
あの母にしてこの息子ありである。
だが、笑った後で泣きもした。
重松は天才じゃない。
でも人を笑わせてじんわりと泣かせるのは作家としての才能。
それは多くの人が認めるだろう。

直木賞を受賞した「ビタミンF」。
ありえない設定ながら読者を重松の世界に引き込んだ「流星ワゴン」。
「その日のまえに」もまた重松ワールド炸裂だ。

人はいつか死ぬ。
「バカの壁」がベストセラーになった養老孟司。
彼は「死の壁」でこんな事実を書いている。

「人間は死亡率100%」

誰にでも訪れる死。
その時家族はそれをどう受け止めるのか?

買って、そして読んで損はない。
「その日のまえに」は傑作と呼ぶべきだ。


追記

以前、自殺をテーマにしている「舞姫通信」についての記事を書いた。

自殺と「舞姫通信」(重松清)

「舞姫通信」が問いであるなら、その答えは「その日のまえに」。
私は少なくともそう考えている。

なお、この作品は2008年に映画化されている。
出演は南原清隆、永作博美、筧利夫、今井雅之ほか。

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その日のまえに(重松清)

その日のまえに 重松清

↑「その日のまえに」に関する記事。参考にさせていただいた。



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最終更新日  2009.01.18 12:58:25
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