2005/08/23(火)22:08
ハーセプチンへの期待と不安
部屋が空いたというので、初診でいきなり母の抗癌剤治療が始まった。
初回だけ1泊の入院。
ハーセプチンは、100人中2~3人は死ぬこともある危険な薬。しかも初回がいちばん危険が高い。通例、3時間かけて投与するところ、この病院では5時間かける。
投与開始後4時間まで付き添っていたが、帰るときはまだ元気だった。
あすの朝、母が生きている確率は97~8%ということだ。
札幌乳腺外科クリニックは19床の小規模な病院。小規模な割には看護師さんが多く、個室の差額ベッド代も5000円とリーズナブル。清潔で病院くささがない。患者がみなやたらと明るい。院内もパステル調で和む雰囲気。
ときどき、ケーキのワゴンサービスがあったり、時間になるとみなで「乳がん体操」をしたりする。
がんセンターや大学病院とはえらく違う。
変な話だが、フィレンツェ郊外のフィエーゾレという小さな街で泊まったペンションを思い出した。
その宿はおばさんがひとりで経営していて部屋数は4つか5つ。10~15人の小さなペンショーネ。だが清潔で、隅々まで手入れと気配りが行き届いていた。自分の部屋でくつろいでいるような気持ちになれる、心休まるいい宿だった。
一泊朝食付きでひとり1000円だったと思う。
そのペンショーネと共通する何かを感じたのである。
19床に3人の医者。常時6~7人はいると思われる看護師。
これは、日本の平均の3~4倍ではないだろうか。
アメリカの看護師の数は患者ひとりあたりで日本の5倍から6倍だというから、この病院はかなりアメリカに近いにちがいない。
ハーセプチンは厳密には抗癌剤ではなく、免疫療法だ。ハーセプチンと抗癌剤の組み合わせで、アメリカのある治験では67%の患者から「完全に」癌細胞が消えたという。
この話をがんセンターの医者にしたところ、「それは最近のはなしでしょ」と言下に否定されてしまった。
がんセンターや大学病院の医者は、過去に確立された治療法こそが大事で「あたらしい治療法の画期的なデータ」には関心がないらしい。
HER2陽性の乳がんになった人は、自由診療でもいいから、手術前でもすぐにハーセプチンを投与すべきだ。
67%の人が、180万円ほどの費用で、癌細胞を消滅させることができる。