投資の余白に。。。

数年に１度くらい会う人がいる。

某オーケストラのコンサートマスターをつとめたこともあるバイオリンの名手である。

この人はぼくが株をやることを知っているので、会うたびに同じ質問をしてくる。

なぜニューヨークダウは１万ドルで、日経平均は１万円なのかという質問である。

この質問に答えるのは難しい。ダウや日経平均の計算方法の解説から始めなければならないからだ。

この質問に答えるのは難しいが、答える必要はない。なぜなら、この質問は無意味な質問だからだ。

ダウと日経平均の価格差についてほんとうに理解し知りたければ、この人はとっくに勉強しているはずだ。

あるいは、自分でも株をやって儲けたいと思うなら、こんなことはどうでもいいことだということが即座にわかるはずだ。

この知人は、自分が音楽バカではなく社会的な問題にも関心があるということを示したいだけだ。質問は社交辞令のようなものであり、本心から知りたいと思っているわけではないのだ。

時々、何か質問しておきながら、こちらが全部答える前に別の話題に移ってしまう人がいるが、そういう人にまともに答えても馬耳東風で、聞いているふりをしながらもう別のことを考えている。だからまともに答えるのはムダだ。

ダウと日経平均の価格差というような質問は、専門家が唸るような高度に本質的な質問をしてやろうというような、言ってみれば知的虚栄心が完璧に欠如した人間からしか生まれない。

 「株は儲かりますか」というような高度に本質的な質問なら、どんな専門家でも苦笑しながら必死に答えようとするだろう。

旧約聖書にこんな箴言がある。

・・・愚かな者には、その愚かさにしたがって答えるな。おのれが愚かな者とならないためにも。愚かな者には、その愚かさにしたがって答えよ。愚かな者がおのれを賢者と思いこまないためにも・・・

自分がバカになることを回避し、同時にバカがバカを自覚するように答えるには、質問の根拠を問いただすのが唯一の方法だ。

無意味な質問には、質問が答えになる。

なぜそんなどうでもいいことを知りたいのですか？それを知ってどうするのですか？

知的虚栄心を欠くとバカになることは、この知人の例からも明らかだ。