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カテゴリ:自叙伝
いまから2000年ほど前の日本人、というか縄文人の平均寿命は約15歳だったという。とはいえ、乳児死亡率が高かったから、実際には30歳くらいまで生きる人は多かったのではと思う。
いまから100年ほど前はというと37~8歳だった。平均寿命は戦後、団塊世代の生まれた1947年にやっと男女共50歳を超えてくる。 寿命がのびたのにはふたつ理由がある。一つは乳児死亡率の減少、もう一つは肉食の普及である。 いまから100年前の日本人は、いまの日本人よりも摂取カロリーは多かった。何がちがうといって、動物性タンパク質の摂取量である。 栄養学者の間では常識らしいのだが、1965年、つまり昭和40年ごろから始まる日本人の劇的な食生活の変化が、その後の日本人の長寿化に貢献したという。伝統的な和食に不足する動物性タンパク質をプラスした絶妙なバランスの食事をとるようになったのが、このころであり、何が変わったといって、肉を食べるようになったことだ。 脂肪酸のデータを見ると、動物性タンパク質からの摂取は1955年と比べて1965年は4倍ほどに、1975年には7倍強になっている。その後はあまり変わっていない。 統計データからは、戦後日本人の長寿化の最大の要因が肉食の普及であることがはっきりと読みとれる。 それでも、子どものころ、肉をかたまりで食べたという記憶はほとんどない。ふだんは鶏肉で、宴会などの時には豚肉のすき焼き、といった程度。子どもがカレーを喜んだのは、脂身だらけとはいえ肉がかたまりで食べられるからだった。 牛肉は国内農家の保護のため高い関税がかけられ、本来は安い肉なのに庶民の口に入ることはなかった。1960年に死んだ祖父は牛肉など食べたことはなかったろう。わたしの記憶によれば、牛肉が日常の食卓にのぼるようになったのは1990年代になってからであり、比較的最近のことなのだ。自民党という社会主義的政権によって食料流通は管理されていたということだが、この一事で自民党は万死に値する。食い物の恨みはおそろしいのだ。 ノザキの「ニューコンビーフ」を初めて食べたのは1962年ごろのことだったような気がする。それはそれは夢のようにおいしい食べ物だった。「コンビーフ」が何を意味するのか、それが肉なのかも知らずに食べていた。どんなふうにして食べたかは覚えていないが、何も調理せず、ただそのまま食べたような気がする。脂身が口の中で溶けると同時に、柔らかい肉質の繊維状のものからうま味がたっぷりと溶け出してくる。 昭和30年代のあのころ、何か食べたいなどというと親に叱られたものだった。生きること、食べることに必死だったころ、食べ物に選り好みを言うことはたいていの家庭でゆるされることではなかったし、子どもも心得たもので、そういうことは決して言わず、嫌いなものもガマンして食べた。 しかしそれにしても4~5歳の子どもに酢ガキを食べさせるかなあ。ホヤやナマコならまだしも、酢ガキはないよ。 それほどまでに子どもの「人権」は無視されていた。 そんな中でも、ニューコンビーフはもう一度食べたい、と思わず言ってしまうほど魅惑の食べ物だった。 ある時、何が食べたいか聞くので、ニューコンビーフのつもりでビーフと言った。そうしたらビーフンが出てきたことがあった。父が台湾生まれのせいで、ビーフンをよく食べていたのである。あのときの落胆は50年近くたった今でも忘れられない。ペスカトーレを注文したらペペロンチーノが、天丼を頼んだら塩煎餅が出てきたようなものである。この世の終わりとはこういうものかとさえ思った。 それ以来、物事には正確を期すようになった。うろおぼえではなく、細部まできちんと記憶し伝達することを心がけるようになったし、そういう細部がいい加減な人間は軽蔑するようになった。 ノザキのニューコンビーフは廉価だった。肉牛ではなく役牛を使い、馬肉も混ざっていたからである。コンビーフの方はビーフ100%だが値段は倍近くした。食べ比べてもちがいがわからなかったので、もっぱらニューコンビーフを買っていた。 「ビーフ」という言葉はビーフ100%のものにしか使えないことになり、ニューコンビーフはニューコンミートと名前を変えた。2006年のことである。ノザキという会社はなくなったが、ブランド名として残っている。 日本人の長寿化に貢献した食べ物の一つがこのニューコンビーフだったが、その割にはこの食べ物は忘れられている。日本人はいつから恩知らずになったのかと声を大にして言いたいが、そういうわたしももう食べることはない。 ただ、野外料理や登山などには重宝する。安藤百福のチキンラーメン、カップヌードルばかりが美談調で語られるのにニューコンビーフは無視されている。戦後食物史における重要度では、カップヌードルごときの比ではないのがニューコンビーフではないだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 7, 2010 11:38:10 AM
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