投資の余白に。。。

May 13, 2010
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カテゴリ:裏札幌案内
以前、「旅行人」の読者会に参加したとき、社会主義国を旅行するのが好きという女性がいた。なんでも、あるのに「ない」と言ってモノを売ってくれないとか部屋がないとか、冷酷な対応をされるのが好きなのだそうだ。マゾ趣味の一種なのかもしれない。

「自然一流 施設二流 料理三流 サービス四流 意識五流」とは、北海道の観光業界についてよく言われてきたことである。略して自然一流、サービス三流と言われることも多い。

小泉構造改革が始まった2001年以降、こうした状況はかなり改善された。陸運局や警察の窓口のようなところへ行っても、旧東ドイツのような木で鼻をくくったような対応をされることはなくなったし、民間においてはなおさらである。

しかし、減ってはきたものの残っている。サービス業従事者のサービス精神は、地方に行くほど欠落する傾向があるが、大都市札幌にもまだ残っている。いくらなんでも旧社会主義国ほどの冷酷なサービスを体験することはないが、冷酷とか冷淡というより、サービス精神の欠落程度なら体験は容易だ。

北海道旅行、札幌観光に欠かすことができないのが、こうした「サービス精神の欠落したサービス業従事者の言動」を、くだんの読者会の女性のように楽しむことである。これを楽しむことができるかどうかで、旅の豊かさは何倍にもなる。

悪趣味といえばいえるかもしれないが、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」の主人公を見習うべきだ。ああいう風にすることで、苦痛で嫌な体験も「思い出」へと美しく昇華できる。あるいは、こうした体験を収集することで、ネガティブ版ヒミツのケンミンショーの材料、俗流文化人類学的素材を蓄積でき新しい発見もある。何より、あとで大笑いできる。
難しいのは、こうした状況に必ず遭遇できるわけではないことだ。愛想のない、もしくは悪い店主の店はやはりだんだんと淘汰されているし、売上が下がった店などは表面的な改善をしてとりつくろうようになるからだ。

「研修中」の札をつけた新入社員が増える春のこの時期は、往時を彷彿とさせる「四流サービス」「社会主義国的対応」に遭遇するチャンスである。これが夏を過ぎ、秋を迎えるころには先輩の教育が行き届いてしまい、「木で鼻をくくったような」対応をされる機会は激減してしまう。

喫煙率の高さなどを総合的に勘案した「県民度」では、北海道はかなり下位にくるものと思われる。北海道は、下級武士や食いつめて流れてきた難民が拓いた土地である。札幌はその難民の末裔が流入してできた都市だ。ヨーロッパの都市のように都市国家を起源とする都市とはその性格がまるでちがう。

それはともかく、こうした、昔ながらの四流サービスというか低い県民性を味わい楽しむ環境が整っているのが、多くの観光客が集まる観光スポットである。最近は中国人観光客が増えたため、四流サービスが復活する兆しもある。

そうした観光スポットの横綱格というと、やはり二条市場だろう。サービス以前にべらぼうに高いので地元の人間は決してここでは買い物をしない。カニを例にあげると、中央卸売市場に比べて同じ観光スポットなのに倍以上する。中央市場はかなり値切ることもできるが、ここは値切るとあからさまに嫌な顔をする。閉店時間に行ってディスカウント交渉という手は、ここでは使えない。

中央市場の最安値を二条市場で提示してディスカウント交渉する。たぶん、話にならない、とっとと帰れといったような対応をされるだろう。家電量販店とはえらいちがいだが(笑)、天気が悪く市内観光が思うにまかせないようなとき、二条市場を訪れて、こうした客あしらいの店による差異を楽しむのは一興だ。思いがけず対応のいい店に遭遇する可能性もないとはいえないので、そうすると楽しさ倍増である。

この市場の一角に「天勝」という食堂がある。朝からやっている食堂は都心でもほとんどないせいか、あるいは鮨を食べ損ねて観光客が入るのか健在だ。この「天勝」の店主などは、かつての「北海道サービス」をいまに伝える貴重な存在である。通りがかりに、もし疲れて不機嫌そうにたたずむオヤジが見えたら、迷わず入ることだ。子ども連れだと理想的。散々イヤミを言われるなど、生涯、決して忘れることのできない「思い出」を得られるにちがいない。グループで行って、全員がまったく違うメニューを、それもできるだけ手間のかかりそうなものを頼んで報復を待つ、という楽しみ方もある。

確実なのは、メニューそのままでなく、ちょっとわがままを言ってみることだ。これはどのような場合でも使える手なのだが、マニュアルにないことを要求してみるのだ。北海道のばあい、たとえば高級デパートのようなところでも、かなりの確率で「客なのに叱られる、怒られる」といった体験ができる。あるいは、愚にもつかない理由で断られる驚きを楽しめる。

黙っていても客がおしよせ商売が成り立つ、そういう場所は世界中どこでもサービスの質は落ちる。パリやヴェネツィアで上質なサービスは期待できない。だが欧米の場合、観光客からぼることに主眼がおかれている。中国人が経営しているような店を除いて、サービスは三流程度で終わってしまうことが多い。なかなか札幌のような四流サービスは体験できないものだ。

この「二条市場」「天勝」から徒歩圏内だと、「第三モッキリセンター」「香州」「三平」といったところが「無愛想」「客にタメ口」といった性格の違いはあるにせよ、札幌的四流サービスがよく保存されている。「香州」は老舗の中華料理店で、大衆中華としては味はまあまあなのに特に混雑時の対応は楽しめる。「三平」は味噌ラーメンの元祖として有名だが、閑散時と混雑時のサービスの落差に驚かされる。できれば両方訪れて楽しみたい。

小樽の鮨屋の対応に激怒した北杜夫の話は有名だ。激怒してしまってはせっかくの楽しい旅行が台なしだし、反省でもされて改善されてしまうとせっかくのローカル性が消えてしまう。北杜夫が激怒した店はつぶれたし、小樽の鮨屋の数は減り続けている。一律のファストフード店的サービスばかりになってしまってはつまらない。こういう土地、こういう民俗習慣なのだとおもしろがるべきなのだ。どうしても腹がたつなら、経営者を呼んで別室で苦情を冷静かつ慇懃に申し述べることだ。店内で大声をあげてもいいが、あくまでパフォーマンス程度にとどめるのが大事だ。食事代がタダになることもある。

鮨といえば完全予約制で会員制の「○鮨」という鮨屋がススキノあるが、ここのサービスも面白い。社会主義的計画=配給経済が実現されている。たとえば18時に予約すると、カウンターの客は一斉に同じネタを「配給」されて食べる仕組みだ。なかなか合理的なシステムであり、自分が客ではなくブロイラーにでもなったような気分が味わえて乙だ。

和食系の大箱の高級店に多いのだが、コースを頼むとどんどん出てくる店がある。これなどは開拓時代から培われた北海道民の勤勉さ、冬に備えて何でも早めに準備してしまう気質をあらわしているのだろう。ゆっくり食べ、さめたお吸い物や揚げ物を味わうとき、ブリザードが吹きすさぶ冬の景色が口の中に広がっていく。さむい。

しかし不思議なのはこうした四流サービスの担い手が女性に多いことである。外国でも同様な傾向がある。本州ではあまり体験したことがない。たぶん北海道は日本ではなく外国なのだ。他のデパートをすすめたことで人気を呼んだアメリカのデパートを描いた映画があった。同様の経験は札幌でもときどきする。

バカ正直ということだが、こうした正直さをバカにする勇気はわたしにはないし、四流サービスの源泉の一つがこのバカ正直である可能性については考慮しておいた方がいいだろう。






最終更新日  May 13, 2010 04:43:42 PM
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