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カテゴリ:読書日記
雑誌や新聞でその文章に感銘を受けても、著書を読んだことのない人というのが何人かいる。堀田善衛もその一人。「いつか読まなくては」と20年以上も思っていたが、NHK人間大学という番組で放送された内容をまとめた本なら読みやすいかと思い、読んでみた。
堀田善衛は1918年に生まれて1998年に逝去している。1992年の放送をまとめたものだから、晩年の著作と言っていい。 鴨長明、藤原定家、法王ポニファティウス、モンテーニュ、ゴヤという時代もジャンルも異なる5人について書かれた(述べられた)本。実はゴヤについてどう書かれているか知りたくて読み始めたが、第一章「乱世について」と巻末にある高橋源一郎の解説がめっぽうおもしろく、つい全体を読んでしまった。久しぶりに知的興奮を得られた本で、名著と言っていいと思う。 この5人に共通するのは乱世に生き、冷静な観察者として生きたことだという視点には、目から鱗がはがれ落ちる思い。 たとえば、一般に鴨長明の「方丈記」は無常観を表したものと受け取られているが、1万字にも及ばない全文を読むと、時代を超越した記録であるという。58歳の鴨長明が、リヤカーのようなものと想像される車2台で運べるような小さな庵を作って住み、23歳や29歳のころの大飢饉や大火事の経験を記録したのが「方丈記」だという。 「はみだし裁判官」だったモンテーニュについてもおもしろい。モンテーニュは「わが国家の死という、このめざましい光景を、その徴候と状態とを、目のあたりに見ることを、私はいささか喜んでいる」と書いているらしいが、この批評精神の鋭さはただごとではない。 時代や社会から離れて隠遁するのではなく、さりとて積極的に進歩や変革に関わろうというのでもなく、悲惨や滅亡をも限りなき好奇心の目で見、そして記録するということ。 日本にせよ世界にせよ、人間精神の荒廃とそれが引き起こす国家や民族の滅亡、あるいは天変地異による突然の歴史の終焉をも、限りない好奇心で、とことん冷静に見続けることにしよう。 「わが国家の死」を見届けたモンテーニュの「幸福」がうらやましい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
February 26, 2012 08:38:57 AM
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