【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

投資の余白に。。。

投資の余白に。。。

July 30, 2012
XML
カテゴリ:映画
この日本語タイトルは内容とまったく関係がない。ポスターやチラシにある「喜びは2倍に、悲しみは半分に」もまったく関係がない。イギリス演劇の伝統を感じさせる登場人物のキャラクターの構築が見事な、そして痛烈な風刺がきいた映画である。これといったストーリーもドラマ展開もなく、もちろんクライマックスもないからカタルシスもない。かといって教訓映画でもなく、ダメ人間を突き放して描くマイク・リー監督の冷徹さが潔いほどすがすがしい。とはいえ、観る人によっては、つまりダメ人間は自分の姿を見るようで不快になるにちがいない。というか、この映画を観てまったく理解できず不快に感じたとするとすでにダメ人間か、ダメ人間になる素質が十分な人にちがいない。

原題は「アナザ・イヤー」。2010年のイギリス映画。

この映画は、監督の立場が主人公の夫婦(知的でエコロジカルな生活を夫婦一緒に楽しんでいる、そこそこ裕福で安定した人たち)と同一であると考えるとわかりやすい。

弁護士の息子を持つこの夫婦の家を訪れるのが、夫婦の同僚や友人ではあるが不安定でダメな人たち。夫の友だちで体重管理のできない独身男、妻の同僚で料理が不得意で離婚と不倫を経験している大酒飲みでタバコも吸う女といった人々。

特にこの女はもうひとりの主人公ともいえる。いい歳をして自分をコントロールできず愚痴ばかりで向上心も、ついでに預貯金もない。

こうしたダメ人間を、それでも優しく包み込む夫婦の暖かさ、家庭があることの良さを印象づけるように描くのがふつうだろうが、リー監督はそうしない。「自分の人生には自分で責任を持つこと」「貴女にはプロカウンセラーが必要よ」とカウンセラーの仕事をしている妻をして言わしめる。排除はしないが、暖かく受け入れることもしない。

こうした人間関係はイギリスではふつうなのだろうか。そうだとすると、いささかイギリスという国と国民に興味もわく。

家庭菜園やガーデニングや料理を二人で楽しみ、タバコは吸わず、テレビも見ず読書を好む夫婦がますます幸福になっていくのに対し、自己コントロールできない中高年男女はますます孤独に、ますます哀れになっていく。「格差」は自分が選びとったものであり自己責任だというリー監督の視点は鋭いし正しい。

それを象徴するシーンはいくつかあったと思うが、ダメ女のメアリーがタバコを吸い始めると屋外にもかかわらず全員が彼女から離れていくシーンは最も明快な例。

みな舞台俳優出身ではないかと思えるほど「表情」で演技のできる俳優を集めたキャスティングが見事。なかでも、「イタイ女」メアリーを演じているレスリー・マンヴィルには、いらいらさせられる役どころにもかかわらず演技力で感嘆させられた。夫婦の妻よりも美人な女優を配した監督の慧眼には敬服させられる。

美人には美人であるがゆえに異性を見る目の育たなかった人が多いが、美人は美人ではない女性よりも不幸な人生を送りがちという冷厳な事実をリー監督はしっかり見抜いている。

夫婦にトムとジェリーという名前をつけたり、こうした典型的に中流な人たちを戯画的に描く部分もある。まったく一筋縄ではいかない監督である。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  July 31, 2012 02:50:10 PM
コメント(0) | コメントを書く


PR

プロフィール

ペスカトーレ7

ペスカトーレ7

カテゴリ

バックナンバー

April , 2024
March , 2024
February , 2024

お気に入りブログ

スピノザ " 真理の内… alterd1953さん

不動産 夢の実現の… やっさんブログさん
減らないお財布を持… toms2121さん
www9945の公開プロフ… kitakujinさん
やまさんの投資日記b… やまさん12y3さん

© Rakuten Group, Inc.