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カテゴリ:映画
この映画、2013年のパク・フンジョン監督の韓国ノワールは傑作だ。
傑作だが、100点満点はつけられない。85点、もしくは90点をつける人が多いだろう。その10点から15点分のマイナスはどこから来るのかを考えることが、この映画を見る意義の半分を占める。 まずラストまで貫かれる緊張感がすごい。134分、いっときも目を離せない。この先どうなるのか、まったく予想もできないし、たとえ予想したところでことごとく裏切られることになる。 華僑出身の若い警察官がその資質を見込まれ暴力団組織にスパイとして潜入する。やはり華僑で組織ナンバー2の男とは「兄弟」として信頼され、苦楽を共にする。 警察の謀略によって組織のトップが殺され、跡目争いが起きる。韓国系と華僑系の対立に警察はこのスパイを使って介入し、内紛をあおり組織を消耗させようとする。しかし警察の思惑とは正反対の結果を招き、主人公のイ・ジョンジェ以外では全体を知るただひとつの立場である観客のわれわれでさえ予想できなかった結末に至る。 この、観客に手の内を全部さらしているにもかかわらず、予期できない結末(それも心理的な深みのある)を用意できたのが、凡百のノワールと異なる点であり、この作品が傑作であるゆえんだ。 キャスティングの見事さと俳優たちの存在感がすごい。特に組織ナンバー2の華僑系ヤクザを演じるファン・ジョンミンは圧倒的。凶暴さと愛嬌、侠気や優しさと怜悧な知性、おそろしいが憎めないキャラクターを見事に演じている。ファン・ジョンミンと組織のトップを争うパク・ソンウンの落ち着き払った冷徹さ、どこか弱さのあるイ・ジョンジェとの対照は鮮烈とさえいえるほどだ。 もちろん韓国ノワールであるからして激しい暴力描写や血なまぐさいシーンも満載だが、こうしたものを忌避するあまりこういう傑作を知らずに終わるとしたら人生の大損にちがいない。 では欠点はどこにあるのか。ひとつは、この華僑系ヤクザと主人公であるスパイの「兄弟」としての絆の描かれ方が弱い点。警察のスパイであることは早々にわかるので、この警察官に感情移入して見てしまう人が多いと思われる。そうすると、この二人の「絆」は単なる功利的なものから生まれたヤクザ社会一般のそれとかわらないと思えてしまう。 ラスト近くでわかるし、ラストそのものでもわかるのだが、この二人の「絆」は実際はお互いの命を差し出しあうほど深い。それがそのように描かれていたならとてつもなく感動的な作品になっていたと思う。 ラスト近くはテンポが速すぎ、意味がわからないまま通りすぎてしまうと思われるシーンがいくつかある。実際、わかりやすい映画を受け身で観ることに慣れすぎている人、70歳以上の人は半分くらいは意味がわからないまま終わり、家に帰ってから解説を読んでやっと理解することになると思われる。また、北朝鮮の乞食をギャングとして雇うのだが、これがちょっと戯画的にすぎ、ハリウッド的安易さに通じる部分があったのが残念。 イ・ジョンジェの上司役は韓国映画では常連で名優のチェ・ミンシクだが、同じ内容の映画を日本で作るとして、適当な俳優がまったく見つからない。チェ・ミンシクのような俳優はいそうだが、映画やテレビに出ているような俳優の中にこの3人を演じられそうな人を見つけるのは不可能だ。 「新しい世界」とは警察によるこの組織壊滅作戦の作戦名だが、内容というか結末そのものでもある。このセンスもすばらしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
June 11, 2014 12:49:54 PM
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