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カテゴリ:クラシック音楽
フランスのオーケストラよりフランス風の音がする、といわれるモントリオール交響楽団。聞くのは22年ぶり2度目。ケント・ナガノで聞くのは初めて。
たしかにティモシー・ハッチンスのフルートをはじめ管楽器セクション特に木管は線の細い繊細な響きがフランス風。金管も柔らかく明るい音色で決して割れるほど強奏したりしない。しかし弦楽セクションはさほどでもない。パリ管弦楽団などに比べると地味で暗めの音がする。クリーブランド管弦楽団のようなヨーロッパ・トーン。 12型(たぶん)で演奏されたラヴェルの組曲「クープランの墓」は、全奏でも濁らずニュアンス豊かな、ディナミークの万華鏡のような変化に富んだ上品さが、たしかにフランスのオーケストラを凌駕する見事さ。 これほどクールで高揚しない「ボレロ」、打楽器の存在感のない演奏をきくのははじめてだ。前半は最前列できいたが、小太鼓の音はかすかにしかきこえず、そのせいかアンサンブルも不安定。ただ、ケント・ナガノの、あくまでバランスの整った自然な音楽作りを志向する美学というか音楽性はよくわかった。 ムソルグスキー(ラヴェル編曲)の「展覧会の絵」は、だからまるで編曲作品ではなくラヴェルの作品であるかのように響く。しかフランスのオーケストラのような原色の色彩感はないので、ちょっと派手目の水彩画のような印象。ドラマや激情を排した演奏は、ここまで徹底すると、立派だがかなり好悪が分かれるのではないだろうか。流麗すぎてひっかかるものがない。「美学」以上のもの、つまり哲学がきこえてこない。 まるで当初からのプログラムのように演奏されたアンコールの「ラ・ヴァルス」は、精密さにおいては「クープラン~」を上回る。大編成のオーケストラがこれほど小さい音で精妙な響きをたてるのは驚きではあり、ケント・ナガノとこのオーケストラの蜜月を証明する端的な例。しかしこも曲に秘められた狂気や倒錯のようなものはまったくききとれない。 この曲は、この曲をバーンスタインから学んだという高関健が指揮する札幌交響楽団の演奏できいたことがあるが、その凝縮と解放が交錯する圧倒的な名演に比べると、食べるとすぐ口の中で溶けてしまう砂糖菓子のようで物足りなかった、というより白々しさばかりが残った。 日本民謡のフランスふうな編曲に続いてのアンコール、ビゼーの「ファランドール」も、テンポこそ最後ではたたみかけるように加速したものの、シンバルなど聞こえるかどうかというほどの小ささ。 ケント・ナガノの自然で上品な音楽性は称賛に値するし、淡白な東洋的感性も好ましい。 しかし、音楽との一体感や共生感をこの日のプログラムからは感じることはなかった。音楽、特にライブ・コンサートはそれが命だと思うので、ケント・ナガノは原則、これからは録音で聞くだけにする。 ホールの規模はやや異なるが、福岡や西宮のホールの音がまだ耳に残っていた。結局、いちばん印象に残ったのは札幌コンサートホール(通称キタラ)の音のよさである。フィラデルフィアやボストン、ローマやミラノのオーケストラをこのホールできけるような日は、いつか来るだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 1, 2014 01:49:33 PM
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