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カテゴリ:読書日記
1980年代のはじめ、労働運動関係の本を読み漁った時期がある。
当時はまだ労働組合の組織率も高く、それなりに力を持っていた。反基地や反軍事演習の現地闘争でも官公労をはじめとした組織労働者の参加は多かったし、中小企業の労働組合も70年代に大学を卒業した人々が内部で組合権力を握り始めていて活気があった。 労働組合の書記になった知人もいたりして、学生運動、住民運動と並ぶ柱のひとつである労働運動をきちんと勉強しておきたいと思ったのである。 そんな中、当時はほとんど理解できなかったが最も印象に残り、いつかはきちんと読みこなせるようにならなくてはと思っていた本が本書。絶版になっているが、上下巻にわかれた新版が再版されているようだ。 名著だ。1969年5月に刊行されているが、日本における労働運動の基本原則と戦術・戦略が完全に叙述されているという印象を持った。 著者の陶山健一は共産主義者同盟から「革共同をのっとる」という志をもって分裂前の革命的共産主義者同盟に参加した人で、分裂後は中核派の最高幹部のひとりとなった。1997年に61歳で逝去しているが、およそ新左翼の活動家・指導者でこの人ほど党派と潮流を超えて敬愛されている人をほかに知らない。 共産主義者同盟の島成郎や生田浩二よりは5歳ほど若く、北小路敏や唐牛健太郎とほぼ同じ世代だが、本書発表時は33歳に過ぎない。その年齢で、日本の労働運動全体を見わたし長所と弱点をえぐり出し、進むべき道を示しているのだからすごいというほかない。 当の中核派は革命軍戦略による対革マル戦争と迫撃砲などによるゲリラ・パルチザン戦争に傾斜していくことになるが、もしこの人が本多書記長暗殺のあと中核派の書記長になっていたら、その後はかなり変わっていたのではないかと思わせる。 この人の実弟は革マル派の最高幹部のひとりであり、革マル派に対しても影響力を行使できた可能性があるからだ。 印象的なのは、街頭政治闘争の意義についての部分。ふつう、職場闘争と街頭闘争は対立的なものとしてとらえられることが多いが、街頭政治闘争を労働者の経験的教育の場としてとらえ、その重みを評価している点。 これは、街頭闘争に一度でも参加したことのある人間ならたちどころに理解できる。街頭で機動隊と直接に向き合い、その暴虐を目の当たりにしたとき、100回の学習会よりも階級的意識を高めるものだからだ。 わたし自身、野次馬的に参加した闘争で機動隊の暴力を受け「一瞬にして」国家の本質を知った。あれこれの国家の政策に対するおしゃべりや賛否の見解の披露ではなく、いわんや「投票」などではなく、国家そのものといえる警察権力の解体・打倒がいっさいの核心であることはこうした闘争を通じてのみ理解される。 革命は、職場の労働者をどれだけ街頭闘争に連れ出すことができ、警察権力と軍隊を圧倒できるかで決まるし、それ以外のものを革命とはいえない。 保守的・右翼的な労働組合であった動労千葉が、三里塚闘争への参加を経て最も強力な労働組合に生まれ変わっていったのは偶然ではない。 観念的空語がひとつもなく、実践のための問題意識に貫かれて書かれている。具体的かつ徹底的だ。 こうした著者の態度こそ誠実さの見本であり、見習うべきはそうした思想的態度である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 4, 2016 02:58:20 PM
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