投資の余白に。。。

May 8, 2016
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カテゴリ:読書日記
法政大学には浅からぬ縁というか因縁がある。

クラスメートや友人の何人かが進学しただけでなく、社会のあちこちで興味深い人物に出会ったところ法大出身者だったというケースが多いし最近もあった。

学生が自主管理している24時間開放の学館もあった。法大学館は、西の京大西部講堂と並ぶアンダーグラウンド文化→サブカルチャー文化の東の拠点だった。オールナイトコンサートなどに何度か足を運んだ記憶がある。

わたしが知るのは1985年ごろまでだが、その頃は学生運動が健在で、自治会やサークルを中心に千人規模の集会やデモ、ストライキが打ち抜かれていた。部外者に政治地図まではわからなかったが、中核派と黒ヘルノンセクトが競いつつ共存しているように見えた。政治的なサークルではなくても意識は高く、合唱団のようなサークルでもほかの大学とは全くちがっていた。

その後の学生運動の現場は知らない。法大はその頃でも特殊で「ガラパゴス」と呼ばれていたが自治会、学生寮、サークル会館を拠点とする運動は当局の拠点つぶしによってそのころすでに衰退していたとはいえ、主な大学には社会科学系だけでなく映画、演劇、軽音楽系のサークルのメンバーが中心となった学生運動は小なりといえ健在だった。

たしかその頃の警察白書には、新左翼運動の高原状態は続いていて積極的な参加人員は5万人とあったような記憶がある。三里塚闘争でも、1000人程度だった中核派の部隊が徐々に増えて4000人くらいの動員に成功していたし反核運動は50万人を集めていた。

先細りしてはいくだろうが、社会の矛盾に敏感な若者はいつの時代にも一定いる。1980年代の学生運動で最も印象的なのは、全共闘運動の敗北に乗じて権勢を誇った日本共産党系学生自治会の無惨な凋落であり、党派全学連自治会の形骸化だが、むしろそうした党派運動の衰退は無党派学生運動にとってプラスではないかと楽観する部分もあった。

現在でもいくつかの大学では自治会や学生寮を拠点とした学生運動は存在するが、85年から今までの学生運動はどうだったかの知識を得たいと思って読んだのがこの本。著者のメールマガジンは以前から購読していたし、ツイッターで近況も知っていたが、あらためてこの本を読んで「そんなことがあったのか」と驚かされた。

中川文人は、現在では陰謀論者に変質してしまってはいるが、1987年の法大第一文学部自治会委員長だった人物。現在は著作業で何冊かベストセラーを出している。実兄は本書で知ったがクラシック音楽の出版社を経営している。

中核派と黒ヘルノンセクトは競争的に共存していると思っていたが、本書によればそうではなく、黒ヘルは中核派の下請け機関と化していたという。その状況を変えようと事態が大きく動いたのが1988年で黒ヘルは中核から自立し時には対決していく。

破防法被告でこの時期法大に常駐していた松尾眞(元京都精華大准教授)のエピソードなどは党派幹部の思考法や行動形態がわかって興味深い。

中川氏のソ連留学、復帰と学館をめぐるかけひきなどを通して、とうとう氏は中核派の殺害対象とされる。これが1994年。バブルとその崩壊という大きな社会現象の中で学生運動がほとんど壊滅していた時期である。

対革マル戦争の勝利的終結を経て中核派が全国大学での支配を強めようとしていた時期に、それに果敢に抵抗した「武装し戦う黒ヘル」があったという事実は重く受け止めなければならないし、党派の組織指導のいい加減さ、詳細は明らかにされていないが「戦争」の内幕、固有名詞は控えられているが優秀なノンセクト活動家群像には感嘆と感銘を禁じ得ない。

本書はファシストとして知られる外山恒一のインタビューで構成されている。このインタビューがなかなか優れていて、活動家でなければ聞き出せないポイントを突いていくし答えが当意即妙というかアタマの冴えを感じさせる。直接会ったことはないが、80年代以降のノンセクト活動家の中でも群をぬいて優れた存在だっただろうと思わせるだけの人物だ。

中核派は他党派とちがって無党派の存在には寛容だったという印象があるが、権謀術数の一種でしかなかったのかもしれない。

中川の最後の一言が泣かせる。

「本気で学生運動をやるとボロボロになり」「精神病院に入ったり社会の最底辺で厳しい生活を余儀なくされている奴もいる」し「自分もいつそうなるかわからない」。だが「学生運動をやったことを後悔したことは一度もなく、仲間もみんなボロボロになったけど、誰ひとり後悔していない」

それが学生運動だ、と言うのだ。

100%同意する。学生運動のない時代に生まれた人間、学生運動があったのに参加しなかった人間たちは、100回、この言葉を音読するがいい。

きみに残された人生の貧しさにがく然とすることだろう。

中川が引退し中退したのと同じ年にかの松本哉(法政大学の貧乏くささを守る会)が法大に入学してくる。

次に読むべきは松本哉「貧乏人の逆襲」なのだろう。

なお、外山恒一による「前書き」は、1985年から2010年ごろにかけての学生運動の簡潔ながら闊達な要約となっていて、あちこちで知った名前が結びつく。だめ連、カラカラ派、フリーター全般労組といった「新しい左派」の出自を知ることができ非常に有意義だった。








最終更新日  May 10, 2016 01:01:30 PM
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