2016/07/12(火)13:09
こんなコンサートに行った~BUNYA TRIO コンサート3
元札響チェロ奏者の文屋治実が主宰するピアノ・トリオ。ほかのメンバーはバイオリンの岡部亜希子とピアノの新堀聡子。3度目のコンサートだがきくのははじめて。
一発屋というか、一曲だけが飛び抜けて有名という作曲家がいる。リムスキー=コルサコフなどはその典型で、「シェヘラザード」かせいぜい「スペイン奇想曲」が知られるくらい。コルサコフにはオペラや交響曲もあってときおり演奏されるが、演奏頻度から言うと99%が「シェエラザード」(と熊ん蜂の飛行)だろう。
その昔、隠れた名曲がないかと思って探したことがあったが不発だった。
そのとき室内楽までは調べなかったので、この曲(ピアノ三重奏曲)めあてで行ったのがこのコンサート。コルサコフが円熟期に書いたこの作品、作曲者本人は失敗作と考えたらしい。弟子が加筆したものが出版されたという。
4楽章形式の大作だが、チャイコフスキーのトリオのようなおぼえやすいフレーズもなく、失敗作ではないがせいぜい佳作というところ。最近、作曲家の全集が廉価で発売されることが多いが、もしコルサコフの全集でもあれば、その中と一作としてきくのであればまた発見があるのかもしれない。3人の熱演を持ってしても作品の弱さは補えないという印象。
前半はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第一番。ピアノ三重奏曲としては突出して多く演奏される作品。メンデルスゾーン特有の感傷性が美しい作品だが、どちらかというとスケール豊かに演奏されていた。
しかしこうして並べてきいてみて思うのは、やはりピアノという楽器と他の楽器の相性の悪さ。弦楽器だけでなく、管楽器や声楽でもピアノが加わるとそれらの持つ個性的な音色や高次の倍音を消してしまうようなところがある。マリンバなどのような鍵盤打楽器にもそう感じることがあるが、ピアノは同時に10個(あるいはそれ以上)の音を出せるから始末が悪い。
たいていの曲が弦楽器付きピアノソナタのようになってしまう。
だからピアノパートが弦楽器が同時に出せる音(4つ)よりも少ない音しか同時に出さないようなピアノ三重奏曲が書かれるべきなのではないだろうか、などと思った。
他の楽器の相性の悪さといったことから逃れられているピアニストというと、グレン・グールドとアンドレア・バケッティくらいしか思い浮かばないが、菅野潤なんかはいいかもしれない。