このたびの旅〜山形国際ドキュメンタリー映画祭1
山形に来ている。8日から15日まで8日間開かれる山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加するため。三里塚シリーズで知られる小川プロダクションが上山市でドキュメンタリー映画を製作していたことから、彼らの尽力もあって1989年に始まったこの映画祭は隔年開催で今年が14回目。過去13回の上映作品数は2334本、コンペティション応募作品数は軽く一万本を超えるという途方もない催しである。このコンペティションが最も話題になっていたので、映画コンクールのような映画祭とずっと誤解していた。しかし、調べてみると14回目の今年はラテンアメリカ特集などもあり165本の映画が上映されるという。この機会を逃したら永久に見られない作品はかなりの割合にのぼる。8日間と言っても実質は5日間の催しであり、全体の2割を見られるかどうかというところだが、小川プロの遺産というべきこの映画祭に敬意を表するためにもやってきた。山形市に来るのは38年ぶり。当時の記憶はまったくないが、泊まったホテルのお湯が途中で水になり寒かったこと、夜7時を過ぎるとほとんどの店が閉まっていたことを覚えている。だが書店の多さや整備された自転車道路など、文化度の高い街だというのがすぐわかる。常設の映画館もこんな地方都市でこんな映画をと驚くような作品を上映したりしている。コンビニがあり以前のような不便はないが、それでも夜8時を過ぎると開いている店は少ない。初日は開会式とマヌエル・ド・オリヴェイラ監督の「訪問、あるいは記憶、そして告白」(1982年)が上映された。今年106歳で世を去ったポルトガルの巨匠オリヴェイラ監督の自伝的な作品で、今年初めてカンヌ映画祭で上映され日本では初上映。オープニングにふさわしく詩的かつ哲学的で思索的な68分。監督本人が語る、想像をかきたてる意味の含有率の高い言葉の数々は全部メモしたいと思ったほどだった。オリヴェイラ監督の作品では1983年のテレビ・ドキュメンタリー「ニース、ジャン・ヴィゴについて」も上映される。