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五十目寿男の芋沢日記

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2018年05月09日
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ずっと以前のことである。映画会社の日活に和泉雅子という女優がいた。年齢は吉永小百合より少し下だと思う。言っちゃ悪いが当時の日活は男性路線の映画が主体だったから、女優は刺身のつま扱いで、彼女の出演作品にこれといった記憶はない。ただ、吉永小百合に次ぐ清純派女優として雑誌やテレビに盛んに引っ張りだされインタビューを受けることが多かった。そのうちの一つに妙に気になって忘れられないものがある。

 日本テレビの福留功男アナウンサーがインタビューした時のことである。彼女の父親は銀座で寿司屋を経営していたが、その父親のことを「イヤー、雅子ちゃんのお父さんってすごいね、若いころは銀流しって言われるほど有名だったんだって」と、盛んにほめそやすような言い方をしていた。まるで「銀座を闊歩して歩く伊達男だから銀座流し(銀流し)」みたいな言い草なのである。彼女は知ってか知らずか、ただニコニコとうなずいているだけだったが、見ているこっちは「このアナウンサー、銀流しの本当の意味を知らないな」と即座に思った。知っていたらそんな失礼なことは口にはできない。

 銀流しとは、水銀に砥の粉(とのこ)を混ぜて金属などの硬い物に塗り付けて、さも銀製のように見せかけたもののことを言う。つまり、見かけは銀のように見えるが中身は本物じゃないという意味である。これを人間に使うと、チャラチャラした中身のない見掛け倒しの男という、非常に馬鹿にした意味になるのである。福留アナウンサーはそんな知識がないものだから、銀流しという言葉に飛びついてしまったのだろう。
 ただ、このアナウンサーはほかの番組でも、「御用達」のことを何度も「ごようたつ」と言っていたから、やむを得ないところはある。
 
 こんなつまらないことを50年近くも記憶している筆者も、まあ、あまり褒められたものではないと自覚はしています。





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最終更新日  2018年05月09日 02時00分09秒



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