2020/09/14(月)11:22
【本】「戦乱と民衆」
【2020年月12日(土)】
Facebook繋がりの大学時代のクラブのT先輩から紹介されて、図書館で借りて「戦争と民衆」という本を読みました。Facebookに「観光客が少なくなって、シャッターが閉まっている店が多く、皮肉にもシャッターに描かれた若冲の絵がたくさん楽しめてしまう」という文章と写真を掲載しました。それにT先輩が反応されて、『「戦争と民衆」という本に「京都を破壊したのは京都人」の章があって、今の錦市場の町並みの悲惨な現状もそうなのではないか』とのコメントをいただいて、読んでみたくなって読んだ次第です。
題名:「戦争と民衆」(講談社現代新書)
著者:磯田道史、倉本一宏、F・クレインス、呉座勇一
発行所:講談社
発行年:2018年第一刷
ページ数:204ページ
価格:780円+税
著者全員が国際日本文化研究センター(日文研)の先生方でしたが、読んでみて理由が分かりました。2017年に日文研で行われた一般公開シンポジウム「日本史の戦乱と民衆」の内容を本にしたものだったのです。そして、このシンポジウム、実は私も聴講していました。→こちら
ですが、話言葉はどうしても右耳から入って左耳に抜けてしまいますので、それぞれの発表の概要はおぼろげながら憶えていても、内容まで詳しく憶えていませんでした。こうやって文章にするとなると、当然、編集の中で分かり易くなるように文言や順序が変えられたりしているでしょうし、分かりにくいところや興味のあるところを読み返したりできるので、今回は自分のものとして理解できたように思います。
内容は、戦乱というと、支配者(武家や朝廷など)からの視点で語られることが多いが、被害にあったり、足軽として参加したりした民衆の視点での見方も重要ではないかという考え方に沿って、その具体例として、白村江の戦い、応仁の乱、大坂の陣、禁門の変が紹介されたものです。非常に興味ある内容でした。
この本の第三部だけシンポジウムの後日に身内だけで行われた座談会になっています。身内だけという気安さもあるためか、ここには「京都嫌い」の井上章一氏(現日文研所長)も入っているためか、やや横道にそれたり、より本音で話が進んだりして、本編位以上に面白かったです。
そのなかで、なるほどなぁと思ったことがあります。
京都の市中で幅の広い通りが3つあります。堀川通、御池通、五条通です。それらはいずれも太平洋戦争のとき空襲での延焼を防ぐために、建物を破壊して拡げられたものです。このことは知っていました。その3つの道路で作られた「コの字」形のところに、祇園祭の山鉾全部が入っているというのです。確かにそうです。これには「なるほどなぁ」と思いました。井上章一氏は「山鉾を外側の類焼から守るために、このコの字が決められたのではないか。」という主張をしておられます。それに対して「山鉾があるところは、人口密集地で道を拡げにくかっただけ。」というような反論もありました。ただ、これら通の回りも当時から人口密集地域だったはずです。町の中枢を守るためだったという考えもできますが、京都駅や京都府庁、京都市役所はこの「コの字」の外です。逆に、市の中心が先に爆撃を受けたとき、京都駅や京都府庁、御所などを守るためという考え方もできます。いずれにしても、面白い発見だなぁと思いました。
「戦乱と民衆」より
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