ワルディーの京都案内

2021/06/05(土)01:14

【若冲と応挙】#19 その他の若冲の絵(続き)

若冲と応挙(55)

【2021年6月3日(木)】  今日は、6月1日の会の終了後の記録を完成させて、ほっと一息というところです。 「奇想の画家 若冲と応挙」第19回目、「その他の若冲の絵」の続きです。 ◆第2章 伊藤若冲(続き) 2-12 その他の若冲の絵(続き)  図Aの「雨龍図」は、「ニャロメ」を彷彿とさせます。赤塚不二夫氏は、この絵から「ニャロメ」のデザインの着想を得たのかもしれません。また、この絵は同時代に生きた曾我蕭白の「柳下鬼女図」(図B)のパロディではないかという説があります。この「雨龍図」はユーモラスな作品ですが、龍の鱗(うろこ)には「筋目描き」が使われています。    図Cに「雷神図」、図Dに「月に叭々鳥図(ははちょうず)」を示します。いずれも絵の主人公が真っ逆さまに降下する可愛らしさのなかにも緊張感あふれる絵です。縦長の掛け軸を活かした構図といえそうですが、垂直落下の絵は彩色画にもあり、「動植綵絵」の図E「芦雁図(ろがんず)」にも垂直に落下する鳥が描かれています。  若冲は人物画をほとんど描きませんでしたが、水墨画では相応の作品を残し、少ないタッチで愛嬌のある顔を描くことが多かったようです。そんな顔の描かれた図F「白衣観音図」、図G「托鉢図」、図H「三十六歌仙図屏風」を示します。「三十六歌仙図」は、誰一人まじめに和歌を詠んでいる人物はおらず、「琴を弾く」ならず「琴を引く(ひっぱる)」姿、ヨーヨーのようなものに興じる姿など、自由奔放な姿が笑いを誘う作品になっています。ところでこの「三十六歌仙図」ですが、黒鉄ヒロシ氏の漫画を思い起こさせませんか。  前回、風景画「石灯籠図屏風」の明確に分けて描かれた近景・遠景や遠景の暈し(ぼかし)は、円山応挙を意識して描いたものかもしれないと書きました。また、今回の図A「雨龍図」は曾我蕭白の「柳下鬼女図」のパロディーではないかと書きました。その他にも、他の画家を意識して描いたように見える絵があります。  図Iに若冲「象図」、図Jに琳派・俵屋宗達「白象図」を示します。想像の域を出ませんが、若冲は宗達の絵を意識して描いたのかもしれません。  象の絵では、もう1つ他の画家の描いた絵とよく似た絵があります。図Jに若冲の「象と鯨図屏風」の右隻部分、図Kに長沢蘆雪(後述する円山応挙の弟子)の「白象黒牛図屏風」の右隻部分を示します。両方とも白象を左横向きに置き、ここでは絵は省略しますが、それぞれ鯨という海の大きな動物、牛という陸の大きな動物を左隻に右横向きで置いたところが似ています。ただ、若冲の作品の方は1795(寛政7)年と制作年が特定されているのに対し、蘆雪の作品の方は、寛政後期(1794〜1799)頃というだけで制作年が特定されていません。ですから、若冲が蘆雪から影響を受けたのか、蘆雪が若冲から影響を受けたのかはよく判りませんし、筆者が読んだ美術書のなかには、この2つの絵の類似性について触れた本はありませんでしたので、たまたま似ているだけということなのかもしれません。しかし、若冲の象の背中には花が描かれ、蘆雪の象の背中には、同じような位置にカラスが乗っています。蘆雪の象は画枠をはみ出すように描かれ、鼻もしわくちゃに描かれています。蘆雪が若冲の象の絵を観て、その象をパロディー化し、「向かい合わせるなら陸の動物だろ。」と牛を向かい合わせたのではないかと筆者は勝手に想像しています。 ●前回はこちら   ●次回はこちら よろしかったらぽちっとお願いします。 にほんブログ村

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る