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2021/09/11
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テーマ:京都。(6067)
カテゴリ:若冲と応挙
【2021年9月11日(土)】

 一昨日、昨日と連続で終日事務所出頭でした。色々とてんてこ舞いでした。今日も終日PCに向かって、会の諸事ですが、直近の締めきりのおのはないので、少々気は楽です。


 「若冲と応挙」いよいよ本編の最終回です。「絵の比較」を終えましたので、「生涯の比較」をしてみましょう。


◆第4章 若冲と応挙を比較してみる(続き)

4-2 生涯を比べてみる

 若冲、応挙、二人の画風の大きな違いはどこから来るのでしょう。もちろん、天賦の才能の違いの影響が大きいでしょう。しかし、彼らの生まれた環境、あるいは育った環境も、かなりの部分影響をしているのではないかと私は考えています。そういった点を箇条書きで簡単に比較してみましょう。

生きた時代
若冲:1716年(正徳6)2月8日-1800年(寛政12)9月10日 85歳没
応挙:1733年(享保18)5月1日-1795年( 寛政7)7月17日 53歳没
共通:江戸時代中期の画家。応挙の生きた時代は、若冲のそれに完全に含まれる。

生まれた環境
若冲:現京都市内、錦小路の裕福な青物問屋の長男。
応挙:現京都府亀岡市。貧しい農家の次男。
共通:現京都市内あるいは京都市近郊

育った環境
若冲:裕福なので青物問屋主人になっても絵を描き続けることができた。好きな画題、得意な画題を描いていればよかった。⇒動植物の絵がほとんど。動植綵絵は寺院の荘厳。売り物ではない。
応挙:幼くして僧になるべく近くの金剛寺に預けられ、やがて京都に出て、玩具商・尾張屋に奉公し、眼鏡絵を描く。絵を描くのは生活のためでもあったので、依頼主の要求に応えなければならなかった。⇒遠近法、オールラウンダー
共通:盛年時期は京都中心部に居住。両人住居は至近距離。天明の大火で焼け出される。

絵を学ぶ
若冲:狩野派の技をなすもの大岡春卜に学んだ? 狩野探幽、鶴亭などに影響を受ける。
応挙:狩野派系石田幽汀に学ぶ。沈南蘋、狩野探幽、渡辺始興、日本古典画などに影響を受ける。
共通:中国画に学び、影響を受ける。

交流のあった人々
若冲:大典顕常、伯珣照浩、売茶翁⇒禅の教え。生き方を学ぶ。絵の模写のツテ。
池大雅⇒文化的交流
応挙:円満院祐常、三井高美、妙法院門跡真仁法親王⇒絵の注文主、絵の模写のツテ。
与謝蕪村⇒文化的交流
共通:皆川淇園、木村蒹葭堂⇒文化的交流

弟子と没後の展開
若冲:限られた弟子の数。師を超える弟子は現れず。師が余りにも個性的過ぎた。若冲の代でほぼ途絶える。
応挙:多くの弟子を育てた。師は偉大だったが、発展、展開の余地があった。森派、四条派など派生流派も形成された。竹内栖鳳など近代画壇にも繋がる。

人々の認知
若冲:没後明治時代までは衆目に知られ人気。その後日の目を見なかったが、最近になって若冲ブーム勃発。発刊されている関連本は応挙に比べて圧倒的に多い。
応挙:没後も一定の認知と人気だが、若冲に比べると静かな人気。
共通:両人、生前は「平安人物志」番付で1位、2位を常に争う。でも応挙が常に上。


伊藤若冲肖像画 久保田米僊筆            円山応挙肖像画 山跡鶴礼筆
 


 応挙が長男として生まれてきたら、いやでも農家を継がなければならず、画家応挙は生まれなかったかもしれません。応挙が若冲の家に生まれてきたら、尾張屋奉公の経験は得られず、後世に名を残すような偉大な画家にはなっていなかったかもしれません。若冲が応挙の家に生まれてきたらどうでしょう。若冲の個性は尾張屋奉公では伸びなかったかもしれません。二人が京都から遠くに生まれていたら、ただ絵を描くのが得意な青年で終わっていたかもしれません。偶然に偶然が重なって天賦の才能が開花し、この二人の素晴らしい作品群を今私たちは目にすることができます。

 副題を「奇想の画家たちの生涯と生きた時代」としました。第1回で、応挙を奇想の画家に含めるのに違和感を覚える人も多いのではと述べました。この連載を読んでいただいてどうだったでしょうか。「精選版 日本国語大辞典」には「奇想」=「普通では思いつかない考え。奇抜な思いつき。」とあります。応挙の例えば「人物を描くとき、骨格を描いて、それに服を着せる」という着想は「普通では思いつかない考え」という意味で「奇想」と呼んでもいいのではないでしょうか。ということで、私は応挙をあえて「奇想の画家」と呼ばせていただいた次第です。

 今回の研究にあたって参考にした主な文献を挙げておきます。

【主な参考文献】
「新版 奇想の系譜」 辻惟雄著 小学館 2019年
「若冲百図」 小林忠監修 別冊太陽 平凡社 2015年
「もっと知りたい伊藤若冲」 佐藤康宏著 東京美術 2011年改訂版
「若冲」 狩野博幸著 角川ソフィア文庫 2016年
「若冲」 渋澤龍彦他著 河出文庫 2016年
「若冲」 澤田瞳子著(小説) 文藝春秋 2015年
「円山応挙」 金子信久監修 別冊太陽 平凡社 2013年
「もっと知りたい円山応挙」 樋口一貴著 東京美術 2013年
「応挙・呉春・蘆雪」 山川武著 古田亮編 東京藝術大学出版会 2010年


 これで本編は終了ですが、次回から何回かにわたって参考資料を投稿する予定です。



(続きます)


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最終更新日  2021/09/12 03:29:46 PM
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