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はらぺこぐんだん2~殴りBISの破砕日記~

8章




8章
【天才】




EM黒虹を難なく紅覇が倒した後
僕たちは何事もなかったように街を闊歩(かっぽ)していた


「あの~・・・紅覇さん?」

隣で歩く紅覇さんに
僕は少し戸惑いながら視線を向ける

「どうしたの?ジグ」

紅覇は何でもないように
普通に「ソレ」をしているのだが・・・


「いや・・・なんで腕を組んでくるんでしょうか・・・」

そう、何故か僕は
紅覇さんに腕を体全体で抱きしめられている

「なんとなくよ、いいでしょ?」

「といっても・・・痛っ」


普通ならばこのシチュエーションであれば

腕に柔らかいものが当たっ・・・等となるのだろうが
紅覇は鎧を着込んでいる

腕にガシャガシャ当たって痛いのだ


少し嬉しくはあるが・・・


「はぁ・・・わかりましたよ」

一向に解く気配の無い紅覇を見て
僕は深くため息をついて諦める

「ふふっ」

嬉しそうに一層強く抱きしめる紅覇
僕も嬉しいのだが・・・痛い


そんな中
僕が痛みに耐えながら歩いていると

「紅覇!ジグ!いいこと思いついたぞ!」

前を1人で歩いていたクランツが
あからさまに平手の上に拳を載せたポーズ

【ひらめいた】のポーズをしながら
僕たちに振り返る

「どうしたの?」

「俺の知り合いでさ、ギルド【メカレオン】ってとこにいる獣人がいるんだけどさ
 【メカレオン】って名前から解る通り、そのギルドはメカとカメレオンが
 好きな人の集まりなんだよな!」


両手を広げて「な?な?」と言ってくるクランツ

「いや、な?って言われても話が見えてこないのだが」

紅覇が未だに僕に抱きつきながら
ちょっと呆れたようにクランツにそう言う

とりあえずこの状況に
ツッコむとかしてほしかったよクランツ・・・


「あぁ、いやね?メカが好きな人達なら、例の件なんとか
 できないかなぁなんて思ったんだよ」

例の件とは
僕たちが現在運営から妨害を受けて出来なくなっている
ログアウトを出来るようにする、という事だ

まぁその為に情報収集をしている訳だが

「うん、試してみる価値はあるかもしれないね」

僕がそう返すと
ガッツポーズをしながらクランツは喜ぶ

「っしゃ!丁度そのギルドの拠点がここにあるんだよ」

ここ、とはオアシス都市アリアンの事である


ギルドの拠点は各街や村であればどこでも設置可能であるが
利便性から考えて

ほとんどのギルドはアリアンか古都に集中している


「そうとなればすぐ行こうぜ」

クランツはそう言って駆け出す

_______
____________
_______


「ここかぁ」

クランツの案内でたどり着いたその建物

予想外の大きさだったその外観に
僕は見上げながら関心する

「一応アリアンにあるギルドで3番目に加入人数が多いんだぜ」

クランツは別に自分のギルドでもないのに
腰に手を当てながら自慢げにしている


「ほら、そんなとこで突っ立ってないで入るぞ」

紅覇はクランツを無視してギルドの中へと進む

ちなみに僕の腕にはもう抱き付いていない
ちょっと寂しいけどやっと心が落ち着くよ・・・

「うぉ、ちょっと待てよ~」

紅覇と共にクランツをスルーして僕もギルド内に入ると
クランツは慌てて僕らの後を付いてきた


「へぇ~」

金属製のあからさまにメカ!といった感じの入り口を抜けると
そこには大小様々なメカメカしいものがあふれ返っていた

所々に何故かカメレオンが紛れ込んでいるが


入口のすぐ脇、そこにはカウンターがあり
そこに座っていた人物が、僕らに気づいた

「やぁ、加入希望者かい?」

そう言って話しかけてくるこの人物

見た目はランサーなのだが
装備や武器は所々改造してあり

なんとなく近未来的なイメージをさせる外見だった

「あ、クランツじゃん」

僕らの後ろからコケそうになりながらやってきたクランツに
その人物は手を挙げて挨拶する

「っとと、よぉ、レオン

レオンと呼ばれたその人物と
クランツはハイタッチをする

「この人達は知り合いかい?」

僕らが来たのはクランツに連れられてきたからだと
レオンは悟ったのかそう聞いてくる

「そう、実は折り入って頼みがあるんだが」


レオンは2秒程クランツの顔を見て首を捻ると

「ああ、ふにゃに用事があるのか」

と、何かに気がついたかのようにそう言った


「あ、あぁ、お前はいつも察しがいいよな」

フッと何故か少しかっこつけながら
クランツは手を肩の前に出し【やれやれ】のようなポーズをする


「ふにゃなら丁度さっき帰ってきた所だよ」

「おお、そっか、ありがとな!」


クランツは親指をレオンに向けて立てると
いこうぜ!と僕らに言って、ギルドの奥へと歩き出す

広い廊下をクランツの後に追従していくが
左右には僕には理解できないようなメカが延々と並べられており
何故かやはりというべきか

やたらとカメレオンのマークやら剥製やらが一緒に並んでいる


「ここだ」

クランツが一つの扉の前で立ち止まり
僕らに合図をする

コンコン

クランツがノックをすると

「へぇ~い、誰かな?」

気の抜けたような声が扉の中から聞こえてきた


「よぅ、俺だよ」

「俺俺詐欺お断りだよーぅ」

「そっか、じゃあまたな・・・ってオイ」

なんとなく2人の間でお決まりなんだろうな・・・
そう思えるやり取りを交わすと

クランツはドアノブを握りドアを開く


「久し振りだな、といっても5時間前ぐらいにも会ったか」

「ふふん、そだねぇ」

部屋へ入るとそこは自動車修理工場を思わせる見た目だった

油の匂いが立ち込めており

所々には僕らには解読不可能な文字がずらっと表示された
モニターらしきものがいくつもあった


「ほぇ?その人達はぁ?」

部屋の中をキョロキョロと見渡す僕と紅覇に気づいた
ふにゃという人物

職業は見たところプリンセスのようだが
部屋とその風貌に恐ろしい程のギャップがある

油臭く機械やモニターが所せましとある部屋に
幼女が佇んでいるのだ・・・

僕がそんな強烈なギャップに心の中で葛藤を繰り広げていると
クランツが僕らの事を紹介し始めた

「こいつはジグ、そしてこっちの美人さんが紅覇
 ちょっと色々あって知り合ったんだ」

「ふぅん」

自分で聞いておいて興味なさそうに
機械をいじりはじめるふにゃ

いつもの事なのだろうか
クランツは気にした様子もせず話を切り出す

「実はな、ジグの事で頼みたいことがあるんだが」

そう話を切り出して
クランツは僕らの今までの経緯を話し始めた


______
__________
______



「それで、お前なら出来ると思ったんだ」

今までの事柄を完結に説明した後
クランツは要望をさりげなく盛り込んだ言葉を最後に言った

「ふぅ~ん、あ、ごめん聞いてなかった」

「おい!」

僕たちは苦笑いをしながら2人を見ている
これも恐らくクランツとふにゃの
お決まりのパターンなのだろう

「と、冗談は抜きにして、あ、冗談を言ったのはふにゃかぁ
 まぁそれはおいといてぇ、簡単だよそんなの」

にひひ、と作り笑いだとは解るのに
どこか自然な笑顔をしながらふにゃは平然とそう言う

「ほ、本当に?」

2人を傍観していた僕も
その言葉を聞いて身を乗り出してしまう

「うん、ここにある設備でメインサーバーを【クラック】して
 そこからデータを中身だけ書き換えればログアウトできるように
 して、さらに希望であればいろいろ付け加えられるけどね」

今までの気の抜けた様な返しが嘘のように
何故かペラペラと早口でそう言うふにゃ

「お、おう、何言ってるのか分からないけど
 出来るってことだよな!」

クランツが理解できるはずもない
そもそも【クラック】とはふにゃが作った造語であり

いくつかのサーバーやデータ群を経由しつつ
それをバイパスでつなぐような一見矛盾しているように感じられる
高等技術であり、そもそもクランツでなくとも解る人は居ないだろう


「中身だけ書き換えるということは、運営の方からは上辺は
 書き換えたのが解らないようにできると言うことか、ふむ」

その方面に強いのだろうか
紅覇は腕を組みながらそう1人で呟く


「それじゃあ、早速たのんでもいいか?」

クランツはそう言って
僕の肩に手を置く

「うん、この機械いぢりよりそっちのほうが面白そうだし
 すぐに始めようかぁ。じゃあシグ君こっちにきて」

「あ、うん、僕ジグです・・・」

何だか呪われそうな名前と間違われたことに
ほんの少し悲しくなりながらふにゃの方へ歩く


「そこに座ってねぇ」

ふにゃに言われた白いパネルのようなものの前に僕は座る

「2人とも離れててねぇ、シグ君、ちょっと痛いよぉ」

「だから僕はジグぅうう!?」

バチバチバチバチッ

名前を訂正しようと振り返ると
ニヤリとしながら、先がトゲトゲしているケーブルを
ふにゃが僕の首に突き刺すまさにその途中だった


すさまじい電撃に見舞われたような感覚に陥り
僕は意識を手放した



_____
__________
_____



「おーい、大丈夫か?」

「うわっ、【ゴッ】いでっ!」


僕を心配して顔を覗きこんでいたクランツに
僕は驚き頭を上げると、コントのように
見事にクランツと頭突き合う形となった

「いてて・・・近いよ」

僕がびっくりしたのは
クランツの顔が超至近距離にあったからだ・・・


「およ、目が覚めたぁ?」

「起きたかジグ」

何やらキーボードをせわしなくカタカタと打ちながら
その横で腕を組んでそれを見ている紅覇と共に
ふにゃが、起床した僕に気づく

「今最終段階の作業に入ったからね、ちょっと集中するよ
 紅覇君も少し離れてシグ君の所に言っててくれないかい?」

「だから僕はジグだって・・・はぁ、もういいや」
「了解した」

機械の話をしている時や、機械を操作している時だけ
流暢に話すふにゃの事が少し分からなくなりながらも

僕らは少し離れた所から
作業の動向を見守る


カタカタカタカタ・・・
カタカタカタカタ・・・


部屋の中にはキーボードを叩く音だけ響く


カタカタカタッ


「ふぅ~」

しばらくするとふにゃの声と共に
キーボードの音が鳴りやむ


「お、終わったみたいだな」

クランツは座っていたカメレオンの椅子から立ち上がり
ふにゃの方へ向かう

それに続いて僕らもふにゃの元へ行く


「とりあえず出来ることはやったよ~」

そう言いながら何故かふにゃは
自分のこめかみをポリポリと掻く

「ん、何か問題でも?」

紅覇がその微妙な仕草に気づきそう言うと

「あ、バレた?実はログアウト可能にするまでは無理だったんだぁ
 その変わり、シグ君についてた自動追尾システムを解除しておいたよぉ
 後、色々君たちに不利になるように設定されてたからそれも解除したぁ」

ごまかすようにまたニヒヒと笑ってそう言うふにゃ


「そうか・・・ありがとな」

クランツは少し残念そうにしながらも
ここまでやってくれたふにゃに感謝をする

「ふにゃさん、ありがとうございます」
「それだけしてくれれば十分だ」

僕と紅覇もふにゃにそう言うと

「いやぁ、ごめんねぇ~」

申し訳なさそうにふにゃは苦笑いする


ここまで来るのにほぼ苦労せず辿り着いた事もあり
それでこれだけの成果が得られれば十分である


「そういえばさ、紅覇君とクランツ君はログアウトできるように
 出来たんだけど、どうしてもシグ君だけ無理だったんだよねぇ
 なんだか君だけデータの質自体が違うんだぁ・・・
 こういうのもアレなんだけど・・・シグ君って本当にプレイヤー?」

ふにゃの言葉に、一瞬部屋の中の空気が固まる

「えっ?えっ?・・・それって・・・」



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このふにゃの一言が
核心を突く一言だったと、後に僕は知ることとなる・・・



~8章完~






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