笹本敦史のブログ

2007/01/20(土)22:54

「麦の穂をゆらす風」胸しめつけられる苦悩

映画(237)

監督 ケン・ローチ  イギリスに支配されていた1920年のアイルランド。兄テディは武装闘争に立ち上がる若者の中心。一方弟のデミアンは医師をめざしロンドンでの就職も決まっていた。しかしロンドンへ旅立つ直前、デミアンは武装警察隊(ブラック・アンド・タンズ)の暴力とそれに抵抗する不屈の同胞に触れ、兄とともに義勇軍に入る決意をする。  戦いは陰惨を極める。脅されて情報を売った仲間を自らの手で銃殺したデミアンは深く傷つく。やがて停戦。  イギリス・アイルランド条約が結ばれ、アイルランド自由国が誕生する。しかしその実態はイギリス連邦の自治領というものであり、北部アイルランドはイギリスのものとされるなど、真の独立とは言えないものだった。  兄テディは自由国を独立へのステップと考え、自由国軍に参加する。一方デミアンたちは真の独立をめざして戦う道を選ぶ。かつての僚友が殺しあう内戦が続く。  アイルランドの歴史について詳しくは知らないが、イギリス・アイルランド条約が結ばれた背景には第一次大戦によってイギリスが疲弊していたことがあるようだ。その後、武装闘争を続けるIRA(アイルランド共和国軍)は時にはナチスと結びついたり、ソ連の援助を受けたりと国際政治の力学に弄ばれる。  家族や仲間を殺される苦悩。仲間、時には兄弟を処刑せざるを得ない苦悩。銃撃戦を目の当たりにした時、私はそれを止める説得力ある言葉を持たない。  気丈なシネードが泣き崩れるラスト。ただ胸をしめつけられ、言葉を失う。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る