笹本敦史のブログ

2007/06/03(日)20:01

「しゃべれども しゃべれども」おしゃべりは深い

映画(237)

監督 平山秀幸  軽い笑いを期待していったのに泣きました。 ちょっとあらすじ   思うように腕が上がらず悩む二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。そんな彼のもとに、無愛想で口下手な美女・十河五月(香里奈)、大阪から引っ越してきたもののクラスに馴染めない小学生・村林優(森永悠希)、解説が下手で仕事をもらえない元野球選手・湯河原太一(松重豊)が話術を習いに集まる。 余談  もう15年くらい前だろうか、上方落語の桂米朝一門会を聞きに行ったことがある。ざこばや他の話もおもしろかったが、米朝(まだ人間国宝にはなっていなかった)は格が違う。「えー」という一声だけで空気が変わるほどの迫力(ということはおぼえているのに演目をおぼえていないのは何故?)だった。  一門の一番弟子で人気もトップだった桂枝雀(この映画でも取り上げられている)はというと、実はあまりおもしろくなかった。声があまり通らず、おどけた表情(これこそ枝雀の売りだったはず)も妙に痛々しく感じたものだ。数年後に枝雀が自殺したというニュースを聞いた時も何となく納得してしまった。 感想  簡単に言えば4人の成長物語。それぞれ他人の弱点はわかるのに、自分のことはよくわからなくて悩む。それを克服したくて五月と優、湯河原は三つ葉のもとに通う。そして五月と優は落語「饅頭こわい」に取り組む。このあたりの展開にやや無理があるようにも感じるが、森永悠希(子役)の屈託のなさや香里奈の美しさで許してしまえる。  三つ葉は大胆にも師匠(伊藤四郎)に師匠の持ちネタ「火焔太鼓」をやらせて欲しいと頼む。当然クライマックスは一門会での三つ葉の「火焔太鼓」だが、これがけっこう見せる。師匠役の伊藤四郎といい国分太一といい、なかなかの芸達者ぶり。  冒頭の三つ葉の受けない落語とクライマックスの「火焔太鼓」は物理的にはあまり大きな違いはない。無愛想な五月と三つ葉の心をとらえてしまう五月もちょっとした違いでしかない。その小さな違いが結構深い。  三つ葉の祖母を演じる八千草薫が可愛らしいおばさん(まだまだおばあさんというのは失礼な感じ)ぶりでなかなか良い。  ただラストはもっと切ない感じの方が好きだ。

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