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カテゴリ:読書
ポトスライムの舟津村記久子 芥川賞受賞作 文芸春秋3月特別号に掲載 少しあらすじ 工場で契約社員として働く長瀬由紀子は29歳。他に高齢者相手のパソコン講師、友人のカフェ手伝いで生活費を稼いでいる。 ある日、長瀬はNGOが主催する世界一周クルージングのポスターを見て、心引かれる。費用は163万円、工場の1年分の給料とほぼ同じ額だ。長瀬は工場の給料をすべて預金することを思い立つ。 感想 世界一周の費用と年収が同じとか、腕に「今がいちばんの働き盛り」という刺青をしたいとか、冒頭部分は刺激的でおもしろい。 しかし、その後は淡々と展開する。会社を退職しカフェを開店したヨシカ、大学を卒業してすぐに結婚して専業主婦になったそよ乃、勤めを3年で辞めて結婚したりつ子、4人の同級生の生活感覚の違いが浮き彫りになるものの、関係が破綻するわけではない。 一回の世界一周旅行で消えてしまうほどの収入、経済的格差のある友人関係、それらに煩わされながらも、それらを壊してしまおうとは考えない主人公の存在は現実味がある。その意味ではおもしろい。 でも、その現実味ゆえに、物足りなさを感じるのも事実。少しは現実と対決してみたらどうだ!と言いたくなる。 選評で山田詠美氏が「蟹工船より、こっちでしょ」と持ち上げているけど、まったく性格の違う作品を比較したって意味はない。たぶん「私は蟹工船が嫌いだ」と言いたいんでしょうけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.02.20 20:05:39
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