笹本敦史のブログ

2009/06/20(土)14:25

「愛を読むひと」 繰り返し語られるべきこと

映画(237)

監督 スティーヴン・ダルドリー 少しあらすじ 1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケル(デヴィッド・クロス)は、無期懲役の判決を受けるハンナと法廷で再会する。 感想 ナチス親衛隊に入り、ユダヤ人収容所の看守となった女性の罪と罰の物語である。というのがわかるのは終盤に近くなってからのこと。 他の看守たちは有期刑となる中、彼女だけが無期刑の判決を受ける。彼女の罪はそれだけ重いものだったのだろうか。そうではないということを証明することは可能だったにもかかわらず、あえて罪を被るのである。 戦争犯罪に協力させられた個人の責任をどう考えるか。それは難しい問題であるし、いずれにしても失われた命は戻ってこないのである。 せめて、何が行なわれ、どれだけの命が奪われ、被害者に(場合によっては加害者にも)どんな苦悩をもたらせたのかということは記憶されなければならない。 ナチスの犯罪は本や映画に何度も描かれてきたが、記憶を風化させないために、繰り返し語られなければならないと思う。 20歳以上も年上の女性に夢中になる思春期の青年という序盤は、「青い体験」系の作品みたいだが、伏線として必要な展開でもある。 食事のメニューを見た時の様子、昇進を告げられて困惑する場面、署名などで、彼女が隠し続けた秘密がしだいにわかるようになっている。それがもっと劇的に明らかになる方が映画的にはおもしろいような気もするが、いろいろなことを観客に考えさせるため、そういった「わかりやすさ」を意図的に避けたのかも知れない。 そういう描き方も良いと思う。でも、空き缶の件などもうひとつ意味がわからないところがあったのが残念。

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