笹本敦史のブログ

2011/02/20(日)15:40

「ヒアアフター」 心に何も残らない

映画(237)

監督 クリント・イーストウッド あらすじ フランス人ジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は津波に襲われ、臨死体験をする。アメリカ人のジョージ(マット・デイモン)は霊能力であることに悩み、その能力を隠して生活している。イギリスの少年マーカスは双子の兄を事故で亡くす。 不思議な体験を忘れられず仕事が手につかなくなったマリー、工場を解雇されたジョージ、里親に心を開けないでいるマーカスが、やがてロンドンのブックフェアで出会う。 感想 予告編を観た時から不安があった。手堅い題材で秀作を発表し続けたイーストウッドにしては、死後の世界とはえらく特殊な題材ではないか。 その不安は半ば的中し、半ば外れた。 生と死をめぐる三つの物語はそれぞれに良い。 津波の迫力がすごい。その描写があるのでマリーの臨死体験が説得力を持っている。津波に襲われる直前、短いカットで危険を匂わせるところや、仕事を干されたマリーの状況をポスターで表現するあたりも上手い。 死者との対話でジョージの人間性が見え、普通の生活を望む彼の気持ちがよく伝わる。 素人の少年を使ったのが成功しているとも言えるが、人のいい里親にも心を開けないマーカスの苦悩がよく表現されている。 3人の別々の話が一つにつながるという展開は、強引な感じもするが、まあまあ納得できる。 つまり、ストーリーテリングも映像も流石という出来なのである。その意味で鑑賞前に抱いた不安は外れた。 しかし、終わってみると何も心に残らないのである。(実はクライマックスの直前に隣の席で携帯電話を鳴らされたのだが、私が冷めてしまったのは、そのせいばかりではないだろう) 死後の世界など、所詮は気持ちの問題でしかない。それは、現実を描くための方便として使うということでない限り、単なるオカルトになってしまう。

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