笹本敦史のブログ

2018/01/01(月)11:39

「ナショナリズムの正体」半藤一利 保坂正康

読書(124)

対談なのであまり深い内容ではないし、賛同しかねるところもあるのだが、いろいろと考えさせられた。 ナショナリズムという言葉には民族主義、国民主義、国家主義の混同があるという指摘はその通りだと思う。 半藤氏によると日露戦争以前は民族主義の段階で、為政者は国民としての意識を植えつけるために軍人勅諭や教育勅語を作った。国民国家が成立したのは日露戦争後ということになる。 江戸時代に国と言えば大きくとってもせいぜい藩の範囲であろうし、薩長が政権を奪って全国を支配したからと言って、その意識がすぐに変わるものではないのは当然だろう。国家としての歴史はその程度なのだということに謙虚になるべきだと思う。 保坂氏が「玉砕だの特攻だのを、日本の武士道だと言っている人がいるけど、とんでもない間違い」と発言している。武士道は江戸時代の思想であり、島原の乱以降220年以上にわたって大規模な戦争がなかったのは武士道という倫理観に律せられていたからだ。剣術や柔術などにもある時期から「道」という字をつけて「剣道」「柔道」と呼び、人を殺傷する技術を、心を究めて自分を律する思想へと高めていった、と指摘している。武士道という言葉がいつからねじ曲げられたのか興味を持った。

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