2009/10/22(木)19:22
マイノリティ・リポート
2002年12月公開
監督:スティーヴン・スピルバーグ
制作費:1億200万ドル
SF小説作家フィリップ・K・ディックの同名の短編小説を原作に、スティーヴン・スピルバーグが映画化した、SFアクション。
長年のあいだ、スピルバーグと共に映画を撮影したかったという主演のトム・クルーズから、制作のオファーがあった。
「マイノリティ・リポート」とは、「少数報告」の意味。
[簡単なあらすじ]
舞台は西暦2054年。
犯罪予防局と呼ばれる組織の設立によって、ワシントンD.C.の過去6年間における殺人事件の発生件数は、0件を記録していた。
これは、プリコグと呼ばれる3人の超能力者達の未来予知によって、殺人を計画したもの、あるいは衝動的に犯行に思い至ったものはすべて事前に察知され、急行した犯罪予防局の刑事達によって逮捕されてしまうからである。
過去に最愛の息子を誘拐された苦い経験のある主任捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)と局長であるラマーは、殺人予知システムが認可され、全米で施行されることを望んでいた。
ところが、司法省の調査官ダニー・ウィットワー(コリン・ファレル)が視察に訪れた翌日、プリコグの映し出した未来予知に、計画殺人の犯行者としてジョンの名前が表示されてしまう。
追うものから追われるものへ、立場の一転してしまった彼の運命は――。
そして、プリコグの一人、美しい少女アガサの観た「マイノリティ・リポート」の真の意味とは――
という、バリバリのSFエンタテインメント。
あらすじを聞いただけでも、「続きが気になる!」と感じた人も多いはず。
殺人が無効であることを熟知しているはずのジョンが、殺人犯にならなければならなかった理由の謎を、ジョン自身が追いかけるという、ミステリとしてもサスペンスとしても楽しめる逸品。
息子を失った苦しみと、自分の過失であるという強い自責の念をいまだ払拭できないでいるジョンが、昨日までの同僚に追い込まれていくという悲劇を、トム・クルーズが熱演。
本作でもトム・クルーズは走って飛んで、と大忙しです(笑)
ただし、この凝りに凝ったストーリーが、評価を難しくしている面が無きにしもあらず……。
というのは、上記のように殺人予知システムの内容を知る立場にいるジョン。
その彼が殺人犯と予知されれば、当然そのことを回避しようとしてしまうわけで、となると今度は未来が変化してしまう可能性が発生して……、
と、非常にややこしい、タイムパラドックス的問題を含んだストーリーのため、一回観ただけでは「なんだかよく分からなかった」というような人が続出。
実際私も、完全に理解しているのかというと疑問が残ります……。
(原作小説でも、この辺の複雑な論理が、話の重要な鍵になっているんですが)
とはいえ、そこはスピルバーグ。
たとえストーリーはあやふやなままでも、素晴らしい映像技術で楽しませてくれます。
特に本作は、“視覚”をキーワードに据えて撮影しているらしく、プリコグの観る未来予知の映像化、網膜スキャンによる未来世界の広告など、斬新な映像が次々と登場。
オーケストラの指揮者のような、独特の動きで行う犯罪予知システムの解析の様子や、壁を垂直に走行することも可能な磁力で走る自動車、殺傷能力を持たない空気銃(?)など、VFXを観ているだけでも面白い。
(あの空気銃は、ドラえもんの秘密道具をモチーフにしてますよね!?)
工場でのバトルのあと、完成した車に乗って脱出するシーンなど、思わず「なんでやねん!」と突っ込みたくなる笑いどころも忘れません(笑)
重要な役回りであるコリン・ファレルと、サマンサ・モートン(アガサ役)の演技もみどころのひとつ。
(路地から飛び出したジョンを車で追い詰めた時の、「やあ」という感じで手を上げた仕種が格好いい)
(足腰ふにゃふにゃな感じが妙にリアル)
犯人を当てるのも、映像を楽しむのもあなた次第。
SF好きにはお勧めの一本です。
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