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カテゴリ:読書
「沈まぬ太陽」(山崎豊子)を読みました。
しばらく前から読みたいと思っていましたが、読み応えのあるものだということぐらいしか前知識がなく、読み始めてから内容の凄さに驚きました。 アフリカ篇を読んでいて一番思ったことは、つらい出来事が多いにもかかわらず、時間が経ってもこんなにもいろんなことを覚えているというのもすごいし、それを丁寧に聞き出していったのもすごいことだということでした。 もちろんこの作品は、多くの事実を元にしているとはいえフィクションの小説ですが、特にその出来事に遭遇した時の当事者でなければ分からない心境がたくさん描かれているし、また作者自身の感想や思いを登場人物の言葉や行動として描いているように感じられるところもたくさんありました。 御巣鷹山篇は内容の凄まじさに、なかなか興味本位で一気に読むというわけには行きませんでしたが、この作品に書くことができたことはほんのごく一部で、多くの書けなかったことがあっただろうと思いました。 会長室篇まで読み進み、感じたことは、 これまではその時々で起きた事件や出来事を、ただ点として捉え、新しい出来事が起こるたびひとつ前の出来事は過去のものとして記憶が薄れがちになっていましたが、 一つ一つの出来事は突発的に起こるのではなく、点は線となって繋がっているのだといういことです。 あの事故の前にはいくつもの伏線があり、過去は現在に繋がっていて、今起こっている出来事も、その時代の流れの中にあるのだと思うと、今これを読んだのはタイムリーだったなと思いました。 読み終えて、結局人は何のために生きてるんだろうか、なんてことを思いました。どの本を読んでも、そんなことを考えさせられる気がしますが。 カイシャとか組織で過ごしてる間、虚栄心が満たされたからって何だというのだろう。 シャカイ的に偉ぶれてる気がしたからって、それで満たされるものだろうか。生きるのに必要なお金以上のものを手にしたからって、どうしょもないし。 モデルとなった人に対する会社の仕打ちはひどいものでしたが、その人生は素晴らしいものだったと思いました。 この作者の作品は、徹底的によく取材されていて、描きにくいことも書いてあるので、とにかく読み応えがあります。政界やマスコミ、財界の暗い部分を描かせたらピカイチだと思います。 ただ、文学的センスは高いとはいえないかもしれません。会話文もありえないくらい説明口調で登場人物はみな饒舌すぎるし、いい人・悪い人・女コドモとそれぞれ典型的に描きすぎて面白みがないというか深みがない気がします。 でも登場人物のネーミングの分かりやすさは、コミカルであっても、これはこれでいいかなという気もします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.13 23:57:21
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