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カテゴリ:読書
「蒼煌」(黒川博行)を読みました。
日本の美術界を題材にした小説です。 これまで読んできたこの作者のものとは趣が違いましたが、とても面白かったです。 日本画といえばまずこの人という人の名前が、なんで関係なさそうな世界の代表に冠せられたり、いろんな行事に出てたり政治家と並んでたりするのかなぁと不思議に思ってはいましたが、 これまで美術や芸術を、このような視点から見たことがなかったので、目からウロコでした。 バブルの後、誰それから誰それになんぼほどの絵画をなんたら…なんてよくニュースで聞くたび、そんなもん欲しいんかね、政治家って分からんなと思っていましたが、そうだったのか!と目の醒める思いでした。 ホントに、これを読むうち世の中を見る目が変ってしまう気がします。 そもそも実力がなければ美術界で出世は出来ないが、ただ黙々と描いているだけで勝手に地位が上がっていくということは決してなく、いつまでも下っ端のまま。 読んでいて、スポンサーとパトロンの違いってなんだろう、と思いました。 ちゃんとした意味はよく分かりませんが、イメージとしては、スポンサーは作品を支援する、そしてそれを公にし宣伝効果などに見返りがあるので、支援する方とされる方の関係は対等。 それに対して、パトロンというとなんとなく後ろ暗いイメージが。作品ではなく人を支援し、その人の生活全般を支える。それによって得る見返りは、表に出されることのないもの。…かなぁ? 中学だったか高校だったか、なんの教科の先生だったも忘れましたが、 「人の生き死にに関係のない、世の中になくても誰も困らないことが職業として成り立つのが、豊かさの証拠だ」というようなことを言っていたのを思い出しました。 以前テレビで、将来何になりたいかと聞かれた子供が、「人に夢を与えられるゲームを作りたい」と言っていたのに、んげ~と驚いたことも思い出しました。 日本だけに限らず、また絵画など美術の世界に限らず、これと似たようなことはあるような気がします。 たとえば音楽の世界でも、こんな絶対的なヒエラルヒーに組み込まれることは望まないにしても、私ら一般人には見えないパトロンというものを感じる人も、いるような気がします。 こういう内容の小説の、表紙の絵が奥さんの作品というのも、肝が据わってるな、ふたりとも。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.11.10 18:57:35
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