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カテゴリ:読書
「石の猿」(ジェフリー・ディーヴァー)を読みました。
リンカーン・ライムのシリーズの4作目です。 今作では、中国人の不法入国と蛇頭が題材になっています。 リンカーン・ライムが徹底して微細証拠物件にこだわり、執念から犯人を追い詰める様を描いてきたこのシリーズ。 何度もどんでん返しがあって意外性があり、しかもそれがこじつけに感じられることもなくとても面白いのですが、 これまでは、あまりにグロテスクで異常な感じもして、気分が悪くなってくる、という印象もありました。 犯人を追い事件を解決するミステリーものには、その解決方法にいくつか種類があって、主人公がどういう方法を取るかが、ヒーロー像を決定づけ、またその小説の大きな特徴にもなるわけですが、 これまでに登場した有名なヒーローとは一線を画した人物を作り出すという点において、この元鑑識官にして四肢麻痺の犯罪学者リンカーン・ライムという人物像は、成功していると思います。 しかし、1作目では新鮮に感じられたリンカーンの手法も、あまりにそれのみに頼りすぎて不自然ではと思うこともあったし、世の中のすべての出来事をこのようにミクロな物質で語ってしまってはかえって面白みがない、と感じることもありました。 その点、今回は微細な物質から驚くような真実を導き出すという場面は、以前より減っています。 代わりに、ソニー・リーという中国人の刑事が、自らからだを張った泥臭い手法で目覚しい成果を挙げ、やがてふたりの間に友情が生まれます。 シリーズのこれまでの作品では、人物像の説明の部分が丁寧に描かれていたので、深みのあるストーリーにとして楽しめることができましたが、リンカーンの気難しく皮肉屋の気質なところや冷徹なところが強くて、事件が解決しても、まだ何か喉につっかえた物が残ったままのような気がしたものでした。 しかし今回の作品の中では、リンカーンはだんだん初めの頃より人間らしくなってきたというか、丸くなってきたというか、少しやさしく、柔軟性がでてきたように感じました。 気性というのは、その人の境遇というか状況というか置かれている立場で、変わっていくものなんだなあと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.03.11 18:02:18
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