2010/06/29(火)13:48
熱い街で死んだ少女
「熱い街で死んだ少女」(トマス・H・クック)を読みました。
これまでに読んだ「緋色の記憶」「闇をつかむ男」とは趣が異なり、警察モノです。
読み始めは、この手の小説によくある警官同士のやり取りを、この人が書いていることに違和感を覚え戸惑いましたが、すぐに面白さに引き込まれました。
時代がかっているのは、いつもどおりですが、今回はマーティン・ルーサー・キングの時代、63年のアラバマ・バーミングハム。
これまで読んだものから作者は白人と思われるので、こういう題材をこのように娯楽小説で取り上げるのは、冒険だなと思います。
歴史的な出来事を正面から扱っているので、しばらくはハラハラしましたが、次第にどういう姿勢で書かれているものなのかがハッキリしてきて、そのメッセージが伝わり、共感して読むことができました。
後で知りましたが、この人自身がアラバマの出身だそうで、少年時代に感じた周囲の空気感や、身近な体験から素朴に感じた思い出などから、この小説は生まれたのかもしれないと思いました。
たとえば、バスの後部座席の黒人の表情がどうであったかとか、前から歩いてきた女性が自分に道を譲るために足をずぶぬれにして脇に退いた、といったエピソード。
そのような身近なエピソードは、いつも身の回りに溢れていますが、それを後々まで印象深く覚えているかどうかが、その人のものの考え方を決めるのではないかと思いました。
こどもの頃は、60年代というと昔のような気がしていましたが、最近は、今現在の出来事や現象とつながりのある出来事が起こっていた、ついこのあいだの事なのだなあと感じます。
今のこの時代はその前の時代につながっているのだなあとか、自分も時代の流れの中に生きているのだなあと、最近よく思います。
私も、歳を取ったなあ。