2010/07/08(木)23:28
ロンリー・ファイター
「ロンリー・ファイター」(ハーラン・コーベン)を読みました。
マイロン・ボライターのシリーズ4作目。
前作ではウィンの凶暴さだけが目立ちすぎて、そんなことあるわけないやろ~と、ちょっとあほらしくなり、このシリーズはもう読むのやめよ、と思いました。
でも無性に面白くて軽いのが読みたくなり、古本屋をのぞいたらこのシリーズのものが2冊並んでたので、また読んでみることに。
これは、いい。この作者はだんだんうまくなるような気がします。
主人公のマイロン・ボライターは元バスケットボール選手で今はスポーツ・エージェントをやっています。
シリーズでは毎回異なる種類のスポーツが取り上げられているのですが、今回はゴルフ。
ゴルフというスポーツを、マイロンがケチョンケチョンにけなすのが、同じくゴルフが大っ嫌いな私にとっては痛快でした。
特に前半はいつものマイロンの軽口も好調で、プッ、ブフッと、笑いっぱなし。家の中でしか読めません。
マイロンの相棒ウィンがゴルフをこよなく愛することは、これまでもシリーズの中で何度も語られてきたのですが、そのゴルフが取り上げられた今回は、ウィンについてもより詳しく描かれています。
これまで異常なほどの冷血漢として描かれてきたウィンですが、今回はその凶暴性は控えめで、最後には意外な一面が描かれているのが印象的でした。
真面目な時ほどおちゃらけた軽口を叩かずにいられないマイロンの性分は、作者自身を投影したもののように思います。
この作者の小説の世界は、ふざけすぎず真面目すぎず、軽いタッチでさりげなく現実世界への皮肉も盛り込まれていて、頃合いがちょうどいいのが魅力です。
シリーズの最初の頃は力みもあり、「こんな風に書くのは配慮を欠くのでは」と思うこともありましたが、その頃合いがバランスよくなったような気がします。
また、マイロンは、クールで皮肉屋なのにスポーツへの思いは純粋で、ある段階まで達した人にしか分からない境地を、大切に持ち続けている人として描かれているところが、読んでいて毎回ひきこまれます。