白拍子の桜子か連獅子か日々是好日

2011/03/23(水)20:12

新橋演舞場三月大歌舞伎

これぞ醍醐味!歌舞伎の大向う(1285)

時節柄、趣味やら娯楽やらのお話は控えめにいたしております。 去る3月11日に新橋演舞場、三月大歌舞伎昼の部にて、とんでもない経験をした後だけに、その後の夜の部は、どうしたものかと思案していましたが、22日に行ってきました。 昼の部のチケット半券で、昼の部の最後の演目だけ振り替えてもらっての観劇でした。 元々3階席3-Bでしたが、振り替えてくれたのが2階席16番台とセンター部でありまして、良く見えましたよ。 でもって、11日に観た分ですが、「恩讐の彼方に」は、前半が菊之助さんの悪婆、中段が歌六さん、後半が松緑さんの僧と染五郎さんの実之助で、各場ともに見応え十分です。 二つ目の「伽羅先代萩」では魁春さん初役になる乳人政岡が、きっちりとした乳人。八汐の梅玉さんもお人柄の良い憎たらしさってところでしょうか。 栄御前の芝翫さんが、心持ちお声が出ていないのが気になりました。 最後の床下では、荒獅子男之助の歌昇さん、そして仁木弾正の幸四郎さんが、おいしいところを持って行ったとでも言えましょうか。 昼の部の最後が「曽我綉侠御所染」で、菊五郎さんの御所五郎蔵。対する星影土右衛門は吉右衛門さん。これまで土右衛門と言えば左團次さんが多かったようですが、今回の吉右衛門さんも悪役っぷりを存分に発揮。 夜の部は、北条源氏から、源氏物語「浮舟」。 菊之助さんの浮舟をめぐって、かなり好色な匂宮を吉右衛門さん、浮舟との純愛を貫く薫大将を染五郎さん。 二人の男の狭間で揺れ動く女心・・・。妻子ありながら強引に自分のものにしてしまう匂宮。あくまで純愛の薫。どれがどうって申しませんが、R15っぽい場面も歌舞伎ならではの演じ方でした。 そうそう、時方の菊五郎さんが、いい味出してました。 夜の部の二つ目は「水天宮利生深川」。筆幸とも言いますが、何度か観たことがありますけれど、浄瑠璃にのって幸兵衛の狂う場面が見どころでよろしいでしょうか。 二人の娘の姉を梅丸くん、妹を吉太朗くんが熱演。散切り頭の松緑さんは、昼の部の俊寛風僧侶といい、これといい坊主頭風の一ヶ月なのですね。 最後の追出しは、梅玉さんと福助さんの舞踊「吉原雀」。幕開き前に「大成駒~!」の掛け声が掛かり、歌右衛門追善らしい舞台でした。 この掛け声については、twitterでも賛否両論でしたが、踊っている福助さんに対しての掛け声と受け取ると否定論になりますよね。 むしろ、歌右衛門を偲び、いつの日か歌右衛門を引き継ぐであろう福助さんへのエールの両方と受け取れば肯定論かな。(掛けたの私じゃないです) 以下、歌舞伎美人から主な配役と、みどころをお借りしておきます。 新橋演舞場 三月大歌舞伎 平成23年3月2日(水)~26日(土) 昼の部 一、恩讐の彼方に(おんしゅうのかなたに) 中間市九郎後に僧了海    松 緑 中川実之助  染五郎 お弓     菊之助 馬士権作   亀三郎 若き夫    亀 寿 浪々の武士  亀 鶴 中川三郎兵衛 團 蔵 石工頭岩五郎 歌 六 (みどころ) 旗本中川三郎兵衛の中間市九郎は、主人の愛妾お弓との不義が露見したはずみから、主人を殺してしまい、お弓と江戸を出奔。二人は峠で茶店を開きながら、夜は強盗を働くようになります。良心の苛責にさいなまれ続ける市九郎は、九州の耶馬溪(やばけい)で出家。了海と名を改めた市九郎は、岩壁の道が難所と聞き、岩を掘って道を作ることを決心します。そして二十年余、衰えながらも岩に挑む了海の前に現れたのは、亡き父の敵市九郎を探す実之助......。  大分県の耶馬溪に残る「青の洞門」の由来記を題材にした菊池寛の初期の傑作をご覧下さい。   六世中村歌右衛門十年祭追善狂言 二、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)   御 殿   床 下 乳人政岡  魁 春 八汐    梅 玉 沖の井   福 助 澄の江   松 江 一子千松  玉太郎 荒獅子男之助 歌 昇 松島    東 蔵 仁木弾正  幸四郎 栄御前   芝 翫 (みどころ) お家横領を企む仁木弾正らは、幼君鶴千代の命を奪おうとしますが、乳人政岡が我が子千松とともに若君守護に努めています。そこへ管領の奥方栄御前が来訪し、鶴千代に毒菓子を勧めます。すると走り出て菓子を頬張った毒見役の千松を、弾正の妹八汐がなぶり殺しにしますが、政岡は顔色ひとつ変えません。栄御前は、政岡が味方であると思い、お家転覆の連判状を渡しますが、一匹の鼠が奪い去ります。宿直の荒獅子男之助が床下でその鼠を捕えようとすると、鼠に化けた仁木弾正が、正体を現し、悠々と姿を消すのでした。  六世歌右衛門の当たり役のひとつで女方の大役政岡に魁春、八汐の梅玉をはじめ所縁ある顔ぶれが揃い名優を偲びます。 三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)   御所五郎蔵 御所五郎蔵   菊五郎 傾城皐月    福 助 傾城逢州    菊之助 新貝荒蔵    亀三郎 秩父重介    亀 寿 二宮太郎次   尾上右 近 番頭新造千代菊 歌 江 梶原平蔵    権十郎 甲屋女房お京  芝 雀 星影土右衛門  吉右衛門 (みどころ) 侠客の御所五郎蔵は元浅間家の家臣。腰元皐月との不義を星影土右衛門に密告され、主家を追われました。その土右衛門と五條坂仲之町で鉢合わせし、一触即発となりますが、茶屋甲屋女房がその場を収めます。今は傾城の皐月は、五郎蔵が旧主のため金策に奔走しているので、土右衛門になびいたふりをして金を工面しようします。心ならずも愛想づかしする皐月に、真意を知らない五郎蔵は逆上し......。  江戸の粋な魅力漂う、河竹黙阿弥ならではの七五調の台詞のやりとり、歌舞伎の様式美溢れる名場面の数々をお楽しみ下さい。 夜の部   源氏物語 一、浮舟(うきふね)    第一幕 二条院の庭苑    第二幕 宇治の山荘    第三幕 二条院の庭苑    第四幕 宇治の山荘        浮舟の寝所    第五幕 宇治の山荘        宇治川のほとり 匂宮    吉右衛門 薫大将   染五郎 浮舟    菊之助 侍従    尾上右 近 右近    萬次郎 中の君   芝 雀 弁の尼   東 蔵 中将    魁 春 時方    菊五郎 (みどころ) 薫大将は、光源氏の異母弟の娘大君に恋をしますが、病で亡くしてしまいます。大君の俤を求める薫は、大君の生き写しで異母妹の浮舟に、想いを募らせていました。浮舟も、清浄な心を持つ薫に魅かれ、薫と宇治でともに暮らす約束をします。一方、光源氏の孫でその色好みを受け継いだ匂宮も、東国育ちらしく自由奔放な浮舟に魅かれます。浮舟が宇治へ移り住んでからも熱心に恋文を送り続ける匂宮。帝から匂宮の妹二の宮との婚約解消の許しが得られず、なかなか宇治に来ることのできない薫に、浮舟は寂しさを感じ、次第に匂宮を意識するようになります。ある夜、匂宮は強引に浮舟の寝所に忍んできて......。  源氏物語「宇治十帖」を題材に、北條秀司独自の視点で人間の心に潜む葛藤を活写した名作をお楽しみ下さい。 二、水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)   筆屋幸兵衛   浄瑠璃「風狂川辺の芽柳」 船津幸兵衛    幸四郎 萩原妻おむら   魁 春 車夫三五郎    松 緑 差配人与兵衛   錦 吾 代言人茂栗安蔵  権十郎 巡査民尾保守   友右衛門 金貸因業金兵衛  彦三郎 (みどころ) 明治維新により没落士族となった船津幸兵衛は、筆を売って細々と暮らしています。妻には先立たれ、幼い二人の娘と乳飲み子を抱え、高利貸しの取り立てに身ぐるみを剥がされてしまう始末。もはやこれまでと一家心中を決意した幸兵衛は、子供たちに切っ先を向けるも、ついに辛さ余って発狂し、乳飲み子を抱えたまま家を飛び出し、身投げしてしまいます。幸い、車夫の三五郎に助けられ、命を取り留めた幸兵衛父子。幸兵衛は正気を取り戻し、これも水天宮様のご利益とみな喜び合うのでした。  明治初期の世相を題材とした「散切物」で、激変する時代に翻弄された士族の悲劇を痛切に描いた河竹黙阿弥の代表作をお楽しみ下さい。   六世中村歌右衛門十年祭追善狂言 三、吉原雀(よしわらすずめ) 鳥売りの男    梅 玉 鳥売りの女    福 助 (みどころ) 吉原仲之町を通りかかる鳥売りの夫婦。鳥追い姿で、放生会の由来を聞かせます。廓気分に浮かれ、男女の駆け引きを楽しく語るこの夫婦の姿は、人がうらやむほど睦まじい。ひとしきり廓話に興じると、鳥籠を肩に、次の街へと去っていくのでした。  当時の流行していた投げ節や小唄を取り入れ、変化に富んだ明るい舞踊を、六世歌右衛門追善狂言として上演致します。 歌舞伎美人のサイトは、こちらです。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る