2007/07/11(水)02:13
第33話、強い信頼関係の裏事情8
ブリッジを亘り、
バンクーバーの綺麗な夜景を見ていた。
長年の夢だった初キッスを今夜やっと終えたのに、
私の心はドロンとよどみ、
あの蛸の吸盤のようなねっとりした感触がまだ唇に残っていた。
「気持ち悪い、、、」
そういいながら
私は再び唇をハンカチで拭った。
やはり初キッスは
シンデレラのように結婚式の夜、大きな花火が上がっている最中で、
いや、
白雪姫のように、眠った私を起こすために王子様が、
それとも、
眠り姫のように、王子様が私のために戦ってくれ、そのご褒美に、、、
色んな夢を今までずっと見続けていたのだ。
そして、
夢の中で夢男にキスされたように、
ラベンダーの味がするはずなんだと
疑わなかった私。
33歳にして夢見がちだった自分を少し情けなく思っていた。
バンクーバーの夜景がどんどん小さくなっていく、
私はそれを見つめながら
遠い昔の花ちゃんとのやり取りを思い出していた、、、。
「昨日ね、彼にキスされたの?」
「でさ、どんな味やった?よく言うやん、レモン味とか、小梅キャンディの味とか、ミントとか、どんな味やった?」
「何の味もしなかった、、」
「花ちゃん、、、まだよかったやん、何の味もせ~へんで、、、
私のはビールの味がしたわ、、、、」
と独り言を言った。
そう、私の初キッスの味は、
ビールの味とタバコの味、
ロベルトの臭い口臭が入り混じった味に、
「ロベルトの腋臭の匂い」
というスパイスが加わった味だったのだ。
なんとも残酷な、
罰ゲームのようなものが私の記念すべき初めてのものになったのだ。
そして、
私は一生それを忘れないだろう、、、、
その日の夜、家に帰ると
スーパーの袋に無造作に、その日着ていた服を突っ込むと、
袋の入り口を固く結び、
ゴミ箱へほおりこんだ。
そう、
「峰不二子ワンピ」
からやっと卒業できたのだ。
続く
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