ドイツケーキ文化論 アイアークーヘン (2) 卵オムレツのなぞ
ドイツの卵ケーキ、アイアークーヘンの続き。今日は、ドイツのお菓子という視点でドイツ文学をのぞくことから始めましょう。ドイツの食文化の歴史を見るとも言えます。Papagena48さんから、ヘルマン・ヘッセの「クヌルプ」という小説にも「卵オムレツ」を男二人がビールと食べる。という件があると教えて頂きました。これも、アイアークーヘン。1890年のお話ですから、丁度、市民階級あたりの人々にとっては、アイアークーヘンがポピュラーな時代です。エーリッヒ・ケストナーの作品と同じ翻訳者、高橋健二さんの翻訳。だから、訳が似ているのは必然かしら。さて、ドイツのアイアークーヘン、卵ケーキの話に戻りましょう。ケーキと言うよりは、お菓子かな。19世紀半ばに出版され、市民階級向け料理本のハシリとして超有名な本にヘンリエッテ・ダヴィディス女史の著書があるんですがここには、Eierkuchenはオムレットの項を参照せよ。と、目次にあり。オムレットの項を見てみたら、「オムレット(アイアークーヘン)」という1930年代とは逆の表示がなされています。ちなみに、アイアークーヘンの項は独立していて、焼き菓子、お菓子の項とは別にあるのです。甘いとは限らないからかもしれません。レシピですが、オムレットという表示で載っているもの、Eierkuchenアイアークーヘンで載っているもの、更に、Pfannkuchenプファンクーヘン、パンケーキ、ホットケーキで載っているものがありオムレットで載っているものは、本当にタマゴタマゴしています。だって、タマゴ8個に対して、小麦粉が大さじ1などというレシピなんですよ。だから、1800年代半ばのオムレットは、ほんとにオムレツに近かったんですね。そしてEierkuchen, アイアークーヘン、卵ケーキ。卵6個に大さじ1の麦粉と書いてあったり・・・まあ、卵と小麦粉の割合はケーキにより近くなっている、と言えますが・・・まだまだ。一方、Pfannkuchen、プファンクーヘン、パンケーキのレシピをみると、こちらは卵3個に麦粉100g。まだ、卵がたっぷりな感はありますが、ケーキらしいものに近づいてきました。ちなみに、麦粉と書いたのは、小麦の粉とは限らないためです。現代の私達の感覚からすると、パンケーキ、ホットケーキと、普通のケーキは違うわ・・・。と思えるのですが、この、ドイツで当時としては売れに売れまくった料理本のパンケーキの項には、そして、1920/30年代に出された、この本を元として、30年代に合わせた形の料理本のパンケーキの項にもKuchen,ケーキ、という名称が堂々と使われています。それがなんなの?と思われるかもしれませんが、今現在、ケーキの本を開くと、パンケーキがただのケーキと称されていることは滅多にありません(私は未だに見たことがない)。パンケーキは、冷えるとまずい。話が横にそれましたが、パンケーキとオーブンで焼くケーキの間には、かなりな溝が存在します。振り返って当時、19世紀半ば。料理本には、「焼き菓子」の項は、別に独立して存在するため、フライパンで焼くケーキとオーブンで焼くケーキは一応区別されていたようですが、当時の人がケーキ、と単純に言った場合、この料理本の表現から見ても、私達が思う普通のケーキとは合致しなかった可能性がかなりあります。というわけで、ドイツのケーキ文化論、歴史編になってしまいましたが、アイアークーヘン、奥深い。きょ