慶文堂　ひま人日記

それァな、オイラが某温泉場でマッサージの仕事をしてる時の事でェ。
同僚のマッサージさんによ、弱視のマッサージのオッサンが居たんだよ。
年のころは、そうだなァ、四十台の後半ぐらいだったかねェ。

オイラも福祉系の大学の出身だ。
身体障害で相手を色眼鏡で見るような、そんな根性は持ち合わせちゃいねェ。
それとは別に、四十過ぎて独身で、ついついみんなから浮きがちな存在でサ、そりゃあ気の毒だから、アレコレと気を使ってたワケよ。


ある時、社長から、

「○○ホテルの○×△号室で二人入ったから、Ｂさんと一緒に入ってくれ」

と言われ、

「ヘイ、合点だ！じゃＢさん、行きやしょうか！」

と、オイラの車でホテルへ（四十過ぎのオッサンとドライブだぜ！ぞっとしねェやなァ）


で、二人で部屋に入ったと思いねェ。

「失礼いたします・・・」

とマッサージを始めたんだよ。黙ってマッサージすんのもなんだしよ、オイラはいろいろと話をしてたんだよ。

「どちらからいらしたんですか？」

とかなんとかよ。
例のオッサン？知らねェよ、そんなモン。コッチは忙しいんでェ。

でさ、１５分ぐらい過ぎたころかねェ。突然隣でオッサンが、

「ハイ！終わりました！」

ってんで、さっさと部屋を出ちまった。
お客さんはと見ると・・・寝てらっしゃる。
なるほどねェ。あのオヤジ、お客さんが寝ちまったのをいい事にさっさと終わらしちまいやがったんだ！
オイラよりも年上の人をこう言うのも気が引けるんだがよ、なんて野郎だィ、まったく！

さァ、コッチは困ったねェ。だってさ、まだ１５分だぜ。オイラはまだ半分も終わっちゃいねェ。
でも一緒に入ったマッサージさんは終わっちまってる。マッサージしてない、別のお客さんは不思議そうにコッチを見ている。どうするよ、オイ！？
こんな事はやりたかなかったんだけどな、仕方がねェからオイラも急いで終わったよ・・・っつってもヨ、２５分はかかったと思うけどな。終わらねェって、そんな時間じゃ！
まったくよォ、冷や汗モンだったぜ。


部屋を出てから、社長へ電話で文句を言ったよ。アレじゃ困る！あのオッサンとは二度と組まない！って。オイラぁ普通は大人しい方だからよ（ホントだよ、イヤ、ホントだってば！）、社長もちゃんと聞いてくれたよ。

それから控え室になってるアパートに戻って、オッサンに直接文句を言ったよ。

「アンタが手抜きしてもナニしても、オイラは知ったこっちゃねェ。そりゃあアンタの勝手だ。アンタの責任だ。でもな、他の誰かと一緒の部屋に入る時には、ちゃんと合わせてくれねェと困るよ。あんな風に勝手に一人だけ帰られたら、コッチの立場がねェだろう！」

オイラ滅多に怒らねェんだけどよ、あの時は怒ったねェ。もう腹立ってさ。
だいいち、お客さんを、仕事をなんだと思ってやがるんだ！！
でもな、あのオヤジ、蛙の面にしょんべんってヤツだ。全然こたえてやがんねェ。
呆れたね！


そりゃあよ、ほとんどのマッサージさんはマジメに仕事するよ。でもな、たま～にこんないい加減なオッサンがいるんだよ。
ま、あそこまでいい加減なオッサンは滅多にいねェとは思うんだけどな。
まっ昼間っから酒かっ食らってた時もあったなァ。車に乗せたら酒臭ェんでやんの。
やっぱりオカシイよな、あのオッサン。今ごろ何をやってんだろうねェ。


以上、今日は江戸ッ子カンちゃんでした！